ライヒーとカムルチーのハイブリッド
雷魚の著名な本。でんでんまるの雷魚読本に、ニイノミさんの雷魚大全。
カムルチーとライヒーのハイブリッドは存在しない・・・・ことになっているが、
存在するという研究文献がある。
それが、和歌山県立自然博物館の学芸員のレポート。和歌山県立自然博物館館報第16号、17号です。
掲載の許可をもらっているので、アップします。PDFでやってはみたんですが、PDFは画質がかなり悪くなってしまって、結局JPEGのZIPでアップしています。ただし、場所に関する表記があるので、その部分については割愛させていただきました。
タイワンドジョウとカムルチーの自然交雑について その1 原文
1
2
3
4
5
6
7
で、コレ読んで簡単にまとめてみましたw
和歌山県にはカムルチーとライヒーが両方いて、ある日、川で稚魚守りの雷魚を発見した。
驚くべきことに、
稚魚を守っていた雷魚は、母親がライヒー、父親がカムルチーであった。これは、ライヒーとカムルチーの自然交雑が行われた可能性がある。つまり、ライヒーとカムルチーのハイブリッドの可能性である。
そこで、これらの集団を捕獲し、種の同定を行った。
カムルチーとライヒーの稚魚は見た目がほぼ一緒である。似たような魚類の同定を行う場合、さまざまな形質に注目して、種独自の特徴を見る。
この研究の場合、背鰭(せびれ)軟条数と臀鰭(しりびれ)軟条数である。
各ひれの名称は左の図の通り。左の図はウィキペディアより抜粋。
雷魚でいうと、この部分である。
先駆者の研究により、ライヒーとカムルチーのひれの軟条数については、
このような結果が分かっている。
そこで、採取した稚魚について各ひれの軟条数を測定した。
100個体測定し、その結果がこれである。
そして、これがグラフにまとめたものである。ハイブリッドとして予測されるのは、背びれ軟条数がカムルチーなのに、しりびれ軟条数がライヒー。もしくはその逆の稚魚。これらがハイブリッドの可能性がある。図の赤で囲われた部分である。
一方、水色で囲われた部分はグレーゾーン。
過去に行われた研究結果でも、せびれ軟条数では、44以下がライヒー、それ以上はカムルチーとハッキリ分かるけども、しりびれ軟条数では、ライヒーは29以下とされる研究結果と、30以下とされる研究結果がある。もし、29以下ならば、水色のグレーゾーンの左半分がハイブリッド(ライヒーの背びれ、カムルチーの尻びれ)。30以下ならば、水色のグレーゾーンの右半分がハイブリッド(カムルチーの背びれ、ライヒーの尻びれ)となり、曖昧でバラツキがあり、よぉわからん部分である。
ちなみに、サンプル個体の写真が2つ写っていたのでそれを紹介しました。カムルチーの稚魚とグレーゾーンの稚魚です。全然違いが分かりません。
反論
軟条数は、場所によって微妙に変わってくるので、これをもってハイブリッドとするのは疑問である。(宮地1983)
同じ水槽でライヒートカムルチーを飼育しても、求愛行動を行うまではいっても、産卵に至った例がない。(前畑1989)
ワタクシの意見
ネットで調べてみると、カムルチーの稚魚とライヒーの稚魚は見た目がほぼ一緒でぜんぜん違いが分かりません。そして、過去の軟条数研究結果でも、バラツキが大きい。表4を見てみても、父親のカムルチーが既にグレーゾーンにいる。そのため、この研究結果だけで、ハイブリッドが存在するというのは、言い切れないと思います。
また、ひょっと、もともとライヒーのネストだったのが、片親が釣られてしまい、行きずりのカムルチーが通りがかって、稚魚守りに参加した可能性だって考えられます。行きずりの魚種違いの雷魚が子育てに参加するのかどうかの研究結果も要ります。
そして、今回の研究結果を見てみると、稚魚でも、ライヒーの稚魚と思われる個体とカムルチーの稚魚と思われる個体がいる。一つのネストなのに、なぜ、両方の稚魚がいるのか?これもハイブリッドの可能性を示す結果であるといえます。さらに、稚魚のうちは、軟条数がバラバラの可能性だってある。例えば、カムルチーの稚魚だけを採取して、稚魚の軟条数を測定・比較したものがあれば、もっと良いと思います。
研究した著者も、引き続き研究の余地があるとのことなので、そちらの研究結果もまた紹介します。
produced by fukusuke