プリントゴッコでデカール製作


ロッドを作って、最後の最後。入魂の作業が、ネームいれです。色々と試行錯誤したので、その変遷を紹介。
一般に出回っているのはインクジェット式のデカールですが、これには欠点が多く、あまり使っている人はいません。その大きな理由は、「インクジェットでは、白い文字が印刷できない。」から。一般的に出回っているプリンター用紙は白なので、白を発色する時は、そこだけ印刷をせずに白を表現します。そのため、白い文字だけを印刷しようと思ったらできないんです。ところが、ロッドは基本ダーク色。自然と白い文字がよく使われるため、インクジェットを使用できない。また、水ににじみやすいというのも、大きな欠点。あと、明るい色の発色が苦手(インクの透明度が高い)のため、黒いロッドに貼った場合は、色が表現できていない場合が多い。

一般的にはドライデカール+アルプス電気のMDプリンタ(熱転写)で印刷するのが一般的みたい。しかし、デカールを製作できる家庭用プリンタはこいつしかなく、新品は5万オーバー。ヤフオクにも結構出ているが、アホほどジャンク品が多い。「動作未確認。ジャンクで、NCNR」。出回っている年式もひじょーーーに古いモデルが多いので、ジャンクはリスクがでかすぎ。後に実験していますが、ワタシが業者からもらったMDプリンターも見事に動きませんでした(汗)
詳しくはプラモやらラジコンマニアのサイトを参考に。


そこで、考えたのがプリントゴッコ!一昔前に年末の必需品アイテムとして使われた名機です。しかし、プリンターの普及によりその地位を失い、2008年製造中止。現在では、消耗品のみの取扱いになってます。どの家庭にもあったくらいのヒット商品だった上に今では使うことのない、まるで理科で習った示準化石のような位置づけです。当然持っている人は捨てるのがメンドクサイ人のみ!タダで譲ってくれるはず!

しばらく探して・・・

やっぱりありました。なべ☆さんよりいらなくなったプリントゴッコB6ハイメッシュという機種を譲ってもらいました。


補足;プリントゴッコについて

学校なんかの印刷機を作っているメーカー、理想科学の出した製版機付き年賀状印刷機。版に文字や絵の穴を空けてその上からインクを付け、版を剥がす。そのため、どんなインクでも使用できる上、どんなものにも印刷可能
この原理は版画のようなモノで、難しい言葉で「シルクスクリーン印刷」と呼ぶ。プリントゴッコはこのスクリーン印刷が出来る数少ない家庭用製版機なのである。同じようにシルクスクリーン印刷が出来る家庭用製版機は太陽精機の「Tシャツ君」。家庭でオリジナルプリントTシャツが出来るもの。Tシャツ君Jrは10000円前後。業務用Tシャツ君はヤフオクで3万前後。プリントゴッコよりも一回り高いが、オリジナル雷魚Tシャツを作りたい方はコチラを選びましょう。

さて、プリントゴッコに戻ってみる。
機種はPGなんちゃらという名前が付けられている。
プリントゴッコB6→プリントゴッコB6ハイメッシュ→PG10→PG11→PG5の順で発売。その後は、製版機能がないものが多いので、ネーム作りには向かない。製版機能が最も高性能なのはPG5。ヤフオクで、6000円くらいの人気ぶり。しかし、基本、どの家庭でもゴミ扱いされているので、ココだけの話、リサイクルショップに行ったら捨て値で放られています。

プリントゴッコで使われるスクリーンは細かい文字の製版が出来ない。そのため、ハイメッシュマスターという版が開発され、以後ずっと続くようになる。直径5mmくらいの英語小文字はキレイに製版できました。製版機能は実にシンプルで、製版方法はB6ハイメッシュ→PG5まで変わらない。そのため、製版機能に大きな差はない。

ただ、消耗品関係に関して、電気屋は理想科学と取引してない場合が多いので、購入には文房具屋に注文しなければならない。また、店員が若いねーちゃんの場合は世代が違うのでプリントゴッコ自体を知らない。会話にならないので、年配の店員を選んで注文しよう。


シルクスクリーン印刷の原理
まずは、表したい文字を印刷します。


で、その上にマスター(版)を置きます。


で、熱入りの光を伝えます。字は黒なので、他の部分に比べ、熱伝導率がいいです。そのため、黒い部分だけ大きな熱が伝わります。


すると、その熱で、黒い部分だけ熱で焼きつき、穴が空きます。


で、印刷したい紙にマスターを乗せて穴が空いた文字の上にインクを乗せて押さえつきます。


ほいでマスターをのけると、穴が空いている部分だけ発色されます。これがスクリーン印刷の原理です。


プリントゴッコはまさにこの原理。

実験開始。具体的な使用方法(試行錯誤も一緒に)
まずは、イラレで作りたい文字を作ります。讃岐の夢ですw


こんなかんじ。年賀状サイズなので、印刷設定をB6にしときます。


インクジェットではインクにカーボンが含まれていないので、コンビニでコピー。コピーするとドラムのトナーにカーボンがついているので、カーボン文字になるそうです。コピーしたほうがどちらかわからなくなってはいけないので、目印に「コピー」と書いておきます。


で、本体に乾電池2本を入れます。このとき、必ず新品を使うこと!説明書に「使うときはいつも新品の電池を」と書いてあります。めんどくさいですが、製版するたびに新品電池にしたほうがいいと思います。ためしに何回も製版する時は、本番前だけ電池を新品にしたほうがいいと思います。


で、製版準備。ハイメッシュマスターとフィルター青(コピー用紙を製版する時に使用)を使います。コピー用紙は理想純正のペンよりもカーボンが多量に含まれているみたいで、製版後にコピー用紙が本体に焼きついてしまうのです。フィルター1枚でも焼きつく時があります。その時はフィルター青を2枚重ねて使用してください。


で、フィルター青、ハイメッシュマスターの順に重ねます。


で、プリント台をセット。


プリント台にあわせて製版する紙をセット。大きい場合は切ります。


で、こんな状態に閉じて


ランプをつけて、ランプハウスをセット。


で、思いっきりフタを閉じると・・・


ビカッ!とひかって、ビリビリ、なにかこげるようなニオイがします。


ランプはこげて、使い捨て。


版に穴が開いてます。


インクの選定
製版が終わったらインク。デカールは水を染みこませる必要があるため、耐水性の塗料が必要です。
右から、ガンダムマーカー。タミヤエナメルカラー、タミヤアクリルカラー


白いのがアクリルカラー。結構サラサラで乾くのが早い。伸ばしやすい反面、塗りムラが出る。写真ではよく分かりませんが、白が薄い部分と濃い部分があります。


赤がエナメルカラー。マニキュア。ドロッとして粘度が高く、乾きにくい。1日くらいたたないと触れないくらい。ただ、ツヤとモコッとした盛り上がりがあるので、ロッドには美しく見える。


ガンダムマーカーの白。はっきり言って、マジックタイプは薄い。使い物にならん。


会社の近くで見つけたニッペのアクリルマーカー。ガンダムマーカーよりは濃いが、塗りムラがひどくて使えない。


次に、製版したマスターを使って、直にロッドにペイントできるかを実験。スキージーという技らしい。マスターを切り取って、マスキングテープで固定し、フデでアクリルカラーをつけました。


マスキングテープを取ると、なんと、マスターの隙間を塗料が通ってしまい、ベタベタ(涙)とりあえず、アクリルカラーは却下。


続いて、粘性の高いホルツタッチアップペン。これはアクリルカラーです。


マスターを通過。ダメ。


あきらめずに、タミヤのエナメルカラー。これは少しうまくいったけど、やっぱりキレイには出来ない。


結局、直接ロッドに塗ることは無理!というわけで、デカールに印刷することにしました。


使うデカールは、愛媛のプラモ屋で見つけたクリアデカール。


こいつは、エナメル塗料で塗るように指示されています。


プリントゴッコにも対応しているので、期待は高いw


指示されている通り、エナメルカラーをマスターに塗ります。


で、ペッタンペッタン。


最初は汚いけど、だんだんきれいになります。

いちばんキレイに塗れたものの拡大写真。

だんだん字が大きくなるにつれてキレイになっているように見えます。しかし、にじみがひどすぎて、これでは使い物になりません。

そこで、どのフォントが一番使いやすいかをチェック。まずは大き目の字で印刷し、使えるフォントのアタリをつけます。

それでも結局はにじみます。


もう、行き詰まってきた為、プリントゴッコの愛用者様のサイトへ行き、質問。

すると、すごい丁寧なアドバイスを頂きました。

まず、製版時に、白いはがきを原稿の下において、製版時のコントラストを確保すること。

より硬いインクがプリントゴッコの印刷に適していること。


つまり、ベチョベチョのエナメルインクでは、印刷は難しいとのことです。


というわけで、硬いインク探し。嫁さんに聞いてみると、3Dネイルカラーという、化粧道具の塗料は?といわれました。これはアクリルですが、アクリルも、固まれば耐水性となるため、チャレンジ。


なるほど。今まで使った塗料と比べると全然粘度が違います。


で、印刷してみると、今までの失敗作に比べると一番マシ(とはいってもまだまだ使い物になるシロモノではありませんが・・・)な出来栄えになりました。やはり、プリントゴッコは硬いインクのほうがいい!ということが分かりました。

ここで、またプリントゴッコサイトの管理人様に相談すると、またまたナイスアドバイスがwww

プリントゴッコの純正インクですが、色が顔料系で、硬化は樹脂だそうです。そのため、紙用のインクですが、十分に耐水性があり、デカールに使っても問題ないのでは?とのことでした。

現在あるインクは何十年も前のものなので、とりあえず、新品を注文しました。300円。


で、インクを出してみてビックリ!めちゃくちゃ硬いです。こりゃチビッコの握力じゃ、インクだせねーんじゃねーか??というくらいの硬さ。チューブから出すのも一苦労。


印刷してみると・・・・こりゃすごい!やっぱり餅はモチ屋。プリゴにはプリゴインクですね!納得の出来栄えです!


で、プリゴの機械に入れて、デカール相手に発色できるかを調査。ペッタンして、印刷しました。


すると、印刷の精度に差が出ました。かすれているものが多いです。


そこで、デカールを下に置いてマスターを乗せ、手でモミモミ指圧をするように、インクを押さえつけました。


すると、完璧!!!!デカールの印刷の場合、孔版の間からニューッとインクが押し出されるように印刷するのが適しているようです。


デカールの印刷方法が確立されたので、今度はスキージー(ロッドに直に塗装)を試してみました。マスターをはさみで切り、マスキングテープでロッドに固定します。


そんで、ハイメッシュインクを爪楊枝で押さえつけるように印刷します。


できあがったのがコレ。スミのほうはインクがかすれていたり、にじんでいたりしていました。マスターをロッドに密着させるのが難しく、少し浮いてしまいます。そのため、インクにムラができてしまったようです。


結局、ネーム入れにはデカールを採用することに決定


で、今度はクリアの選定。理想の純正インクだけでは、やっぱり不安なので、クリアを乗せることに。純正のインクが耐水性とは言ってもやっぱり水性は水性なので、アクリルクリア(水性だが、固まると耐水性)を使ってみました。


クリアを塗って水につけ、なんとかブランクスにくっつけることができました!ただ、デカール、水につけても、なかなか浮きません。この時は冬なので、気温は10度くらい。2分つけても剥離が悪かったです。あまりに剥離が悪くて、デカールをはがす時に何枚も千切れてしまいました。耐水性のインクとはいっても、やはり水性。なるべくなら水につける時間を短くしたいです。そこで、最適な温度を探しました。何十回も試行錯誤した結果、40度くらいのお湯につける。これが最適な剥離です。ただ、やりすぎると、のりが全部のいてくっつかないので注意です。。


で、ラストのエポキシコーティングにデカールが耐えれるかどうかを実験。フレックスコートでしたが、インクやデカールが溶けることはありまん。いけました!


やり方が決まったので、本番です。実際の文字フォントを決めます。フォントをいくつか作り、印刷した後、どのくらいのフォントが適しているのかアタリをつけます。

で、そのフォントで同じ文字を印刷します。ヘラを押し付ける印刷だと、ちょっとずれたりするとまたやり直しになるので、同じ文字を何個も作って、印刷した後、出来のいいのを切り取って貼り付けるためです。




製版し、インクを乗せて、ヘラで押さえつけてデカールにインクを乗せます。このとき、何度もヘラで行ったりきたりすると、マスターがずれて、文字がブレてしまいました。なので、ヘラで押さえるのは2回以内がベストでしょう。また、文字が長いと、それだけ端っこにインクが行きにくいので、なるべく文字を中心に寄せ、狭くしたほうが出来栄えが良かったです。


印刷した後は、ホコリが付かないように、カバーをかぶせて乾燥させます。


印刷した中から出来のいいのを2個ほどピックアップ。


40度のお湯に10秒つけてデカールをブランクスに貼り付けます。黒い下地に白い文字なので、条件が悪いです。だけど、まぁまぁ、ちゃんとした文字になったかな?これくらいが限界です。




エポキシコーティングした後です。ツヤが出ました。よーーーく見ると、白が薄い部分があったりするので、アラ?が多いですが、まぁ、これくらいが限界。満足してますwww


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