Tシャツくんでデカール
Tシャツくん。太陽精機のTシャツ印刷装置。Tシャツのスクリーン印刷が出来るマニアックな装置。市販のプリントTシャツも、原理は同じ、スクリーン印刷です。原理については、プリントゴッコでデカールを参照。本格的なTシャツ製作が出来るというわけで、これで作られたTシャツが市販されているほど。業務用Tシャツくんってのもあり、なんと16万円。ヤフオクを見てみても、隠れたファンが結構多く、なかなかに値段が高水準をキープしています。
白を印刷するための手段。スクリーン印刷。プリントゴッコもスクリーン印刷ですが、使えるインクがものっそ制限があります。また、メッシュが最初から穴が開いているのに対して、Tシャツくんの場合、紫外線が当たった場所のセルは水が通ることが出来ない不溶性になるという利点があります。そのため、使えるインクの自由度があり、いいんじゃないの?というわけでかなり気になっていたわけであります。また、Tシャツ用インクなんで、対紫外線にも信用できます。また、失敗したって、Tシャツ作りに流用すればいいんだし・・・・。雷魚Tシャツ作ってもいいんじゃない!?
というわけで、誕生日プレゼントで、太陽精機のTシャツくんを買ってもらいました。モデルはTシャツくんJr。なぜJrにしたかというと、ずばり、デカール作るのにでかいTシャツくんはいらんじゃろ。というわけです。でかいTシャツくんは3万。また、ランニングコストも重要。Tシャツくんのスクリーンは、5枚で2500円なのに対し、TシャツくんJrは1500円。だもんで、買うならTシャツくんJrです。
まずは、Tシャツくん専用インクジェット用紙に印刷します。スクリーンの真ん中に止めるので、後から切り取るので、中央に印刷して切りやすくしておいたほうがいいです。
で、スプレーのりを印刷面に吹き付けます。滑り止めみたいなもんなんで、2,3度吹いて、30分くらい待ったらOKです。
続いてスクリーンの準備です。ついているのは、120メッシュのスクリーン。紫外線が当たると、メッシュのセルが閉じてしまうんで、UVカットの袋に入れられています。Tシャツくんは、使用直前まで紫外線をシビアに避けてくださいと注意書きがあります。基本、夜の作業のほうが紫外線が少ないので良いです。
スクリーンを出したら、すばやくスクリーンの台座にセットします。
セットした、スクリーンは、コタツの中に入れて、紫外線を避けておきます。蛍光灯からも紫外線が出るみたいなので、室内といえど安心できません。
続いて、水の入れたコップとハケを用意しておきます。
で、印刷した紙をスクリーンに貼り付けます。このためにスプレーのりを吹いていたのです。
で、原稿を紫外線照射装置にセットします。
で、タイマーをLにして(スクリーンの大きさによって調節するみたいです。)紫外線ボタンをポチッとな。
ランプが光ります。おおかた、5分したら、ランプが消えます。そしたら作業完了。
で、原稿をスクリーンからはがします。
水の付いたハケで、スクリーンをなぞります。すると、原稿に書いていた文字が穴となって出てきます。
原理
Tシャツくんスクリーンは、もともと、水に溶けるメッシュです。
それに紫外線が当たると、紫外線が当たった部分だけ、不溶性になります。一方、原稿の黒文字は、紫外線を通さないため、(黒い服は最も紫外線を通さないので、日焼けしにくいでしょ)黒い部分だけ紫外線カット。そのため、裏にあるスクリーンも、黒文字の部分だけ、水溶性を維持するわけなので、紫外線照射が終わった段階で、水を付けると、溶けて穴があくもんだから、版が出来るという仕組みです。以前紹介したプリントゴッコは熱で黒い部分だけを穴を開けるため、原理が少し違います。
で、ハケ塗りがめんどくさくなってきたので、洗面所に水張って、一気に溶かしにかかりました。順調です。
で、キムワイプで水を噴いて、1日乾燥させて、かっちり穴が開いたのを確認しました。
続いて、滑り止めの板にスプレーのりを吹き付けます。
で、いよいよ印刷準備。デカールをスクリーンの大きさに切り取って
滑らないように、板にマスキングテープで固定。滑ったら印字のゴーストが出るので要注意です。
で、スクリーンをセット。これもマスキングテープで固定します。ズレは厳禁です。
で、Tシャツくん専用インクです。プリゴインクと同じく、かなりの粘度です。
ヘラでスクリーンにインクを落とし、
スキージーという板で、インクを下に引き伸ばします。
なるべくスクリーンが動かないように、そっとカッターでマスキングテープを切って外します。
ついに出てきた印刷結果!
なんだこの汚い印字は!?
は、は、は、ハナシにならん(怒)
エッジがギザギザ。黒い部分は、スクリーンのセルが跡になって出てきとる!
こりゃ・・・・・
120メッシュじゃ、デカール印刷は無理!!!
メッシュが大きすぎます。
掃除
インクがついたスクリーンを洗います。ものっそ汚れるので、洗面所で水張って洗うのが良いです。
が、洗うと、スクリーンがクシャクシャになります。スクリーンは、使い捨てと考えたほうがいいでしょう。
別のインクで実験
プリントゴッコで、専用インク以外で散々な目に会ってきているんですが、メッシュが不溶性のTシャツくんスクリーンならいけるかも?というわけで、これも実験してみました。
アクリル絵の具。全然ダメ。
ハンコデカールで使った都インクのCMエース。これもエッジがネチャネチャで全然ダメ。
うーん。やっぱり、Tシャツくんもインクは専用インクのみの使用がいいですね。
230メッシュで挑戦
Tシャツくんは、最もハイメッシュで、230メッシュがあるので、これなら文字をもちっと滑らかに出来るかと思ったので、やってみますた。
早速230メッシュを取り寄せて実験。大きい文房具屋で注文したら2週間くらいで来ます。で、早速露光。版を作りました。さすが、120メッシュとは全く違います。文字のエッジもきれいです。
で、早速プリント。使ったのは、油性インク。230メッシュで使えるインクはたったの2種類しかありません。油性インクと2液性インクです。これはそのうちの1つです。インクの粘性がかなり柔らかく、スキージで簡単に伸ばせます。
さぁ、できたかなぁ〜?
なにぃ!!!!!!全く印刷できとらん!
どういうことじゃこりゃ!?
で、同じデカールをもう一度セットして、思いっきりゴシゴシやってみました。すると、印刷出来た!
キレイに印刷できている文字はすごいきれい!
これはいける。多分、スキージーの力が120メッシュよりも強く何度もやらなきゃいかんかったんだね。
で、洗おうと思ったら、油性インクなもんやけん、水でインクが落ちん!
薄め液を使わないと落ちん。オマケに掃除中にばんばん手についてこんな感じになる。その状態で版を持ったりすると、手に付いたインクがまた付いて、悪循環の繰り返し。
こんなに付いたインクを全部薄め液を使って落とすん!?多分、1本使うぞ。こりゃ無理!
もう、捨てます。油性インクは繰り返し使用はまず無理。スクリーンは使い捨てです。
だもんで、もう一回露光して、今度は、スキージーを何度も往復させて再チャレンジしました。
おっ!こりゃいけたか!?
しかし、
文字のエッジにインクがはみ出してしまって、文字の内側がつぶれとる!!!
スクリーンを見てみるとやはりエッジはインクがにじんでいます。インクが柔らかすぎて、思いっきりスキージーすると、インクがはみ出て見栄えが悪くなる。
これ、むっちゃ難しい!
力が弱すぎたら、インクが出ず、力が強すぎたらインクが出すぎても字がつぶれる。
ちょうどいい力でスキージせんといかん。
で、あきらめず、もいっちょ挑戦。当然、スクリーンは捨てたので、新しいスクリーンを露光させてまた版を作りました。スクリーン使い捨てで再露光は手間がかかってしょうがないです。
うぉりゃぁ!どうじゃい!若干文字がつぶれ気味だけど、これくらいが限界。まぁ、私的には許容範囲なので、これで使うことにします。
ドアップで確認してみると、文字のドット抜けがあるんで、スクリーンがちゃんと抜けてないんでしょうね。このアタリがアナログ印刷の限界。
Tシャツくんナイロンウェア用インク
230Mで使用可能なインクのもう一方がコレ。ナイロンウェア用インク。硬化剤が必要な2液性インク。普通なら、油性がいけると分かった時点でそれに決定なんですが、何でも試してみたい性格が邪魔してやれることは何でもやってしまえ!ということで、コイツもインプレをやります。硬化剤セットで買わないとインクにならないので、結構高く、これだけで1700円くらいしました。
硬化剤が酢酸エチル。イソシアネートではないので、ウレタン系ではなさそうです。
なんか、やばそうなことが後ろにかかれてます・・・・。これはウレタン系と同じ匂いがしそうな・・・・。配合は、レジン100gに対して、硬化剤5ml。
で、また製版。今度は、ハカリがいります。クソめんどい。
ねばい。コールタールのようです。におってみると・・・・
キョーレツ!
ちっちゃいことは気にするな。ワカチコワカチコ。
これとんでもないなぁ。トルエンの比じゃないですよ。毒性はものすごそうです。防毒マスク必須。
ネバサもすさまじい。とてもシリンジで吸い取れるようなシロモノではないです。
19mlとって
硬化剤を1m入れます。
混ぜます。すごい体に悪そうな塗料が出来ました。
で、スクリーンにインクを落として、
スキージ。
あれ?だめじゃ。インクが出てない。
おもくそ力入れてスキージ。うっすらと写りました。が、ノリが最悪。デカールと相性が悪いのか、インクの乗りがよくなくて、印刷すら出来ません。
そして、その後の掃除の大変だったこと大変だったこと。ラッカー用薄め液できれいにしましたが、油性インクと違って、毒性が強いので神経を使います。当然スクリーンは使い捨て。
二度と使いたくないですね、このインク。
プリントゴッコのハイメッシュ+Tシャツくん油性インク
で、新たな試みを思いついたので脱線。Tシャツくんは水を使って版を作るので、水が乾く時間待たないといけません。それが手間。一方、プリントゴッコの製版は熱で黒文字のところを焼ききるんで、乾くのを待つ時間がありません。露光後にスグに使えます。メッシュ数も、Tシャツくんの120Mにくらべると、明らかにプリゴハイメッシュのほうがメッシュ数が細かいので、きれいな文字が印刷できそうです。ただ、プリントゴッコのインクは硬すぎで、スキージしたときに肌荒れがひどく、プリントは荒いです。一方、Tシャツくんの油性インクは柔らかいので、印字面が滑らかにできてうまく印刷できそうです。そのため、プリゴのスクリーンにTシャツくんのインクを組み合わせて使うことにしました。Tシャツくんの油性インクもシルク印刷用のインクなので、うまいこといけばいいんですが・・・・
早速、ハガキサイズに切って製版。
穴が空きましたw
裏側にマスキングテープでデカールをセット。
Tシャツくんインクを塗って、スキージー。
一応出来た!
が、
ドット抜けやエッジのインクにじみが多くて、明らかにTシャツくんスクリーンのほうが出来がいい。
原因はおそらく、プリゴのスクリーンの焼き不足。やはり一瞬の露光でスクリーンを焼ききるので、どうしてもドットが残ります。また、製版時に原稿とスクリーンが張り付いていて、はがすときに、若干紙がスクリーンに残る(フィルター青を使っても)ので、どうしても、スクリーンのドットがきれいに抜けません。だもんで、上の写真みたいに文字のところの抜けが、黒ずんでいるでしょう。
製版の性能は、Tシャツくんのほうが断然上!露光時間がプリゴに比べて長い(大体5分くらい)ので、黒い文字がきれいに反応してくれるのと、水でスクリーンを溶かすので、焼ききるタイプのプリゴに比べると、抜け不足が少ないからだと思います。
よって、デカールを印刷するためのホーム用シルク印刷機はTシャツくんに軍配が上がります。
結論
・Tシャツくんでデカール製作は出来ます。しかし、120Mのスクリーンじゃ、荒すぎて無理。だもんで、230メッシュのスクリーンが必須。使えるインクは油性インクのみ。しかし、油性インクは粘性が柔らかすぎて、スキージ作業が難しい。ダメだったら、一発でデカール死亡。スクリーン死亡。ちょうどいい力加減を調節するのが難しい。また、失敗すると製版からやり直し。スクリーンが5枚で1500円。デカールも印刷1回につき大方1枚使うのでランニングコストが大問題。ただ、キレイにいくと、いいデカールが出来ます。
produced by fukusuke