塩ビゾルの使い方


非常に簡単でキレイで高性能なゴムを作るための奇跡の材料。それが塩ビゾルです。

これが塩ビゾルです。白色ですが、マテリアル的には透明のゴムになります。

これは塩ビ:可塑剤が10:10の割合で入っているゾルです。可塑剤はフタル酸2ビスと呼ばれる油のことで、これが多いか少ないかで出来るゴムの性能が決まります。可塑剤が多いとゾルはしゃばくなり、肉付きは悪くなり、出来上がるゴムは柔らかくなります。反面、可塑剤が少ないと、ゾルはねばくなり、水あめ状のようです。しかし、肉付きは非常によく、ゴムは硬くなります。

中空フロッグで塩ビ:可塑剤=10:12程度。ワームで10:16程度だと思います。

他にも、絶縁スリーブや
(塩ビ:可塑剤=10:10程度)

保護キャップ。
(塩ビ:可塑剤=10:8程度)

子どものおもちゃ、
(ソフビ人形は10:6くらいか?
野菜のおもちゃはカチカチなので可塑剤ほとんどなし。)

ボール。
(おそらく10:9くらい)

などなど、身の回りには塩ビゾルの成形品が数多く存在しています。

どうしてこんなにたくさんの製造物に利用されているかというと、ずばりいって、

簡単で、きれいで、高性能なゴムだからとしか言いようがない、それくらい便利なものだからです。

それをこれから紹介します。

塩ビゾルをステンのハコの中に入れます。

そして、それをヒートガンとよばれる業務用のドライヤー(5000円くらい)で加熱します。


白だったゾルは加熱により、透明になっています。透明になったら硬化完了。

軟質塩ビと呼ばれるゴムの出来上がりです。


出来上がるゴムは柔軟で、そして千切れない、弾力性に富み、破れにくいゴムがたった数分で出来てしまうのです。

塩ビゾルの利点は見た目にもあります。

透明なゴムに油絵の具を混ぜるだけで色つきのゴムになります。

透明な塩ビゾルに油絵の具を重量比で2%程度混ぜるとこんな感じになります。

これをステンの鉄板の上に流し、

ヒートガンで成形します。


色つきゾルの場合、硬化したかどうかは表面のツヤで判断します。表面がツヤのようにテカテカしてきたら硬化完了。

やりすぎると白い煙が出てきて、これがカナリくさいので、ガスマスク(ハロゲン吸収缶)を使って行うと良いです。モノタロで安く手に入ります。
※透明な皮の成形のときに後半に煙が出ています。ちょっとカメラの性能が悪いんで見えにくいんですけど、画面がうっすらと曇ったような感じになっているときが煙が出ている時です。

やりすぎると焦げて硬くなります。

出来上がった黒い皮はご覧の通り。

カラフルな高性能ゴムがこんなに簡単に出来てしまいます。

また、ゴム内部に素材を入れて固めることも出来ます。

これを利用して、食玩サンプルなんかも作られます。

着色には、油絵の具だけでなく、


塩ビ塗料を使ったエアブラシによる塗装なんかも出来ます。

使われる塗料はナガシマのソフビカラー、イリサワのVカラー、藤倉のビニクラーなんかが一般的です。

ただし、可塑剤が多い成形品は可塑剤が塩ビ塗料に移行し、ハガレの原因になりますのであまりやわらかいマテリアルの着色には向きません。

熱不足による硬化不良
キホン、150度くらいまでもっていければ問題はないと思いますが、

ドライヤーはですね、

熱が全然足らなくて硬化しません。

あとライターでもやってみましたが、特性上、炎は上に向かって加熱するため、下にあるゾルに熱を伝えることが出来ず、硬化しませんでした。

とにかく、150度くらいまで持っていけることが出来れば、すばらしいゴムの出来上がりです。。

通常、ゴムは大型の機械が必要な成形品ですが、塩ビゾルの場合、熱硬化型のゴムなので、暖めるだけ出来てしまう、ここが最大の特徴です。150度くらいだったら家庭でも何とかなります。

だから私、フロッグを作れています。

私は自作フロッグを研究する過程で、市販品のゴム素材はほとんど使ってきました。東急ハンズに置いてあるような造形マテリアルはすべてテストしたと思います。

コーキング用シリコンはねばすぎて自由度の高い成形には向きません。また、粘性が高く、盛った場合、中心部が未硬化になります。

2液シリコンは可使時間が長すぎて、盛りたいところが盛りません。また、出来上がる成形品は機械強度が弱く、簡単に千切れます。

エラストマーはベタツキがなくならず、やわらかすぎで成形品の張りを維持できません。また、発火点が200度程度と低いため、加熱中に発火して、火事になるリスクがあります。また、発火点直前でないと溶けないため、作業時間が非常に短く、また溶けたエラストマーは粘性が低すぎて盛りたいところが盛れません。さらに伸びが大きすぎて自身の形を維持できません。

こねて焼いて成形する塩ビ粘土というマテリアルがあります。スカルピーと呼ばれる熱硬化型の材料です。こいつは時間が経つと共にカチカチになります。

消しゴム素材としてやわらかいのも売っていますが、簡単に千切れてしまい、ゴムとしての役割が果たせません。

乾燥硬化型のラテックス。アンモニアくさい上に肉付きしないし、経過と共にネチャツキが増してきて使い物になりません。

軟質の2液ウレタン。これは2液シリコンと同じく、可使時間が長すぎて、ややこしいカタチの成形は出来ません。あと表面のベタツキが解決できません。

最後の切り札が液体ゴムのプラスティディップと呼ばれるマテリアルです。これはハッキリ言ってしまえば、ディップ成形で使う塩ビゾルの代替品です。乾燥硬化型のゴムですが、出来上がる成形品は硬く、肉付きが甘く、柔軟性がありません。所詮は本家の塩ビゾル成形品である軟質塩ビのクオリティには遠く及ばないマテリアルだと思います。

世の中に造形マテリアルはたくさんありますが、そのほとんどは、固まる硬い樹脂です。ゴムほど厄介な造形マテリアルはありません。そして市販のゴムマテリアルは性能が悪すぎます。



塩ビゾルはそれを簡単に作れます。



さぁ、あなたも塩ビゾルの世界へレッツゴ〜!

ε=ε=ε=ε=ε=(o・・)oブーン!


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