市販フロッグの成形方法

原型設計の技術的考察


フロッグの成形方法について

フロッグ製造方法は大きく分けて2種類あり、継ぎ目のないバレヒル方式と、外側には継ぎ目があるけども内側には継ぎ目のないスナプル方式です。ここでは、どうやってそれを作っているのかを洗いざらいレポートしてみます。各成形方法の弱点もあるので必見です。


バレヒル方式(継ぎ目のないフロッグ)
一言で言って、ロストワックス法を応用したスラッシュ成形。(ロストワックス法は、ネックレスやペンダントなどのアクセサリーを作るときの技術です。あれも鋳造なのに、継ぎ目がないでしょう。)





ロストワックス法

まずは粘土で原型を作る。

その原型をもとにシリコンでカタを取る。黒いところは空洞です。型取って、原型を抜けば、型が取れます。上の筒は、キャスト(型に樹脂を投入する)のための湯口です。

そこへ、型を取ったシリコンの湯口から、溶かしたワックスを流し込む。この時使われるワックスは、電気を通す特殊ワックスだと思われます。青いヤツがその特殊ワックスです。

そして、カタを外す。バリつきのワックスが出来上がる。


バリをカッターで取ってペーパーで整えて、取ります。この時、型が2個ある関係で、継ぎ目が出来ます。アイのところからケツにかけて、筋が出来ます。しかし、そんなもんは、ペーパーで削れば終わり。これにより、継ぎ目のない原型が出来上がります。これが、ワックス原型と呼ばれるやつです。この時できるワックス原型を、マスター原型とも言います。

ここからが、自作で出来ないところなんですが、このワックス原型に電鋳メッキを施し、厚さ5mmくらいのニッケルメッキを積層させます。ドブ漬け方式のメッキ(亜鉛メッキなんかでは、高温の溶融メッキなのでワックスが溶けるので、常温メッキの電鋳方式だと思われます。)

そして、ワックス+メッキに穴を開ける。

そして、それを電気炉に入れて加熱します。

すると、メッキは金属なので、ワックスよりも融点が高いわけです。そのため、ワックスが溶けて、穴から流れ落ちます。

こうして、モールド(金型)が出来上がります。この金型は、中空の1枚型モールドです。一応、ココまでが、ロストワックス法による一枚モールド製作というわけです。

詳しくは、これを買って勉強しました。興味がある方は熟読。宮脇書店の本店に置いてます。カルチャースペースにはないので、行くだけ無駄です。結構高かったです。ちなみに、アクセサリー作りでは、電鋳メッキの変わりに、石膏を使うみたいです。




スラッシュ成形
ここからがプラスチック成形です。フロッグで使われる手法は、スラッシュ成形と言われる成形方法です。


メッキモールドに熱硬化の熱硬化樹脂を満タンに入れ、フタをする。


オイルバスで加熱。熱は大体180〜200度くらいと思われる。樹脂を隅々までいきわたらせるために、コロコロと転がしながら湯がく。湯煎されるので、金型は均一な温度で加熱される。この時、熱硬化型樹脂が硬化するだけの温度に達したら、温度の高い、外側から樹脂が固まり始める。図で言うと、水色の部分が固まった樹脂です。紫の樹脂はまだ固まってないので液体です。ちなみに、ここではオイルバスと書いていますが、金型を均一に加熱出来ればよいので、蒸気ガマで加熱でもいいと思います。直火は火元の温度が高く、場所によって、温度にバラツキが出るため、無理だと思います。ちなみに、一気に何十個も作るので、取り出す時間にタイムラグが出来ます。遅く取り出したものは、長い間加熱されることになるので、樹脂が厚く、一方、早めに取り出されたものは、樹脂が薄く、また、オイルバスといっても、熱源は下なので、下のほうが温度が高く、そうすると、樹脂が早く固まるので、熱源に近い部分は樹脂が厚くなります。フロッグの皮が不均一でバラツキが多いというのは、これが原因と思います。


蒸気釜(電気炉)でやる場合
実際に製造現場を見ているわけではなく、予想なのでアレなんですが、ひょっとしたら、オイルバスではない可能性も十分に考えられます。蒸気とオイルバスだったら、蒸気のほうがまだ均一に熱を伝えられるのと、オイルバスだったら、作業が終わった後に、オイルを落とす手間があるので、蒸気釜(電気炉)でやったほうが効率がいいので、ひょっとしたらコチラでやっているかもしれません。蒸気釜でやる場合、

ナミナミに入れた樹脂がこぼれないようにするために、口をつけるかもしれません。この時、口の出口には、熱伝導を阻害するためのフタを取り付けるでしょうね。でないと、フックホールが固まってしまってしまいます。

で、続きです。

いったんモールドを取り出し、栓を外す。内部の未硬化の樹脂を排出する。この時、モールドに開いている穴から未硬化の樹脂を排出します。この樹脂排出口は製品になってからのフックホールとなります。そのため、バレヒル方式のフロッグは必ずフックホールがあります。フックホールがないと、中空に出来ないのです。

こうして中空構造の樹脂が完成。しかし、排出する途中に、金型の余熱で固まってくるので、フックホール周辺には、固まりかけのバリが出来ます。また、フックホールが下にある関係で、排出する樹脂も下へ移動します。その時、金型の下部の余熱があるので、この余熱で樹脂が固まり、結果、ボディ下部の厚みは厚くなります。

だから、

こんな感じに、フックホール側が厚く、フックホールに向かってもっと厚くなるのです。これが、成形方法で出るクセと言われるものです。


んが、ここで問題点一つ。外側から過熱された関係で、外側は固まっているんですが、内側はさっきまで樹脂と一緒に混合されている状態だったので生乾きです。そのため、内側も乾燥させないけません。


そこで、電気炉に入れて加熱する。すると、中空になっている内側にも蒸気が行くので、内側からも加熱することが出来、内側の生乾きだった樹脂が硬化する。

そして、蒸気炉から金型を取り出し、フックホールから樹脂を引っ張って、取り出す。バリを切って、完成。こうして、継ぎ目のないフロッグが出来るわけです。



で、続いて、

スナプル方式
この、スナプル方式が、2つ可能性があると思うんですが、まずは

その1 ブロー成形による中空成形?
ブロー成形は、

2枚のメス型のモールドを作り、樹脂の注入口から、パリソンと呼ばれるチューブ上の熱可塑性樹脂を注入。すると

伸びながら金型にフィット。

あとは金型を開けば、中空のプラ樹脂がポンッ!と排出され完成。

この、ブロー成形だと、モールドをあわせる時に出るバリは外側に出て、内側はバリが出ません。

実際、スナプルを真っ二つにしてみても、外側にはバリがあっても内側にはバリがない。だもんで、このブロー成形の持つ特徴と一致するんですよね。

だもんで、このブロー成形だったら、継ぎ目が出来る(2枚の金型の継ぎ目)のでスナプルはコレで作られるのか?とも思いましたが、このブロー成形は、ペットボトルとか、ポリカップを作る時に使われるものですが、金型のコストが、スラッシュとは比較にならないくらい高いので、たかだか、フロッグみたいな多品種少ロットを作るのに使うというのは、ちょっと考えにくいです。しかも、このブロー成形機ってのは、そこいらにある射出成形機とは比較にならないくらい高いので、何もかもが高いみたいです。ゆえに小ロット生産に対応できるのか疑問です。

また、ブロー成形ならば、パリソンを入れるための穴が必要ですが、どこにあるんだ!?そんなモン。
ペットボトルみたいに、口の部分なんて開いてないし。アイの部分からパリソンを仕込むには小さすぎじゃろう。

フックホールからパリソンを入れることも考えられるが、すると、上側の足の部分に樹脂が行かない。

そして、足の甲まで、中空になっている。こんな複雑で細かい中空成形をブロー成形で出来るのか!?

外バリあり、内バリなしということで、可能性としてはあるかもしれないですが、

おそらく、スナプルはブロー成形ではないと思います。

だったら、他に何が・・・・ということになるんですが、

外側にバリ。内側にバリなしといえば、他に、回転成形というやつがあります。回転成形は、2枚型のモールドの中に、プラ樹脂を流し込み、金型丸ごと3次元的に回転させ、外側に樹脂を積層させるという、いわゆる、FRPで使う、ハンドレイアップ法に似た成形方法です。ですが、回転成形の場合、装置がでかいので、製品もでかくなります。市販品では、マネキンや農業用の巨大タンクなんかがこれに当たります。ですが、わずか、数cmのフロッグをこんな大掛かりな装置で作ると、コストが合うはずがなく、100%違うと言い切れると思います。

インジェクション成形の可能性
インジェクション成形は、オスメスのカタをつくり、成形する形の隙間をオスメスの間に作ります。その隙間にプラスチック樹脂を充填し、オスメスのカタを外して隙間の製品を取り出すという、プラスチック成形では最も一般的な製造方法で、別名、射出成形(しゃしゅつ)とも呼ばれている成形方法です。
継ぎ目があるということで、もしかしたら、上下を別々に成形して接着剤とかで繋ぎ合わすことも考えられますが、スナプルの場合、外側にバリがあっても内側にはバリがないので、2枚を接着していることはありえません。2枚を接着した場合、内側にもバリが出ますから。ゆえに、インジェクション成形で作っていることもありえないと思います。

だったら、何な?という話なんですが、

これもやはり、

バレヒル方式と同じく、スラッシュ成形だろヤッパシと感じています。

スナプルの場合、外側に継ぎ目のバリがあるので、バレヒル方式のような、ロストワックス法によるスラッシュではなく、2枚モールドによるスラッシュ成形ではないでしょうか。

スラッシュ成形でも、ロストワックス+電鋳メッキではなく、初めから2枚モールドで作ることは可能です。スナプルには、スラッシュに必要な、樹脂を抜くためのフックホールもあります。

そして、スナプルは、スラッシュ成形で出る決定的な特徴を一つ持っています。

それが、

これです。足。

足の甲の部分は中空を保っているけども、

先っぽは、中空になっていない。ソリッドティップ状態ですwしかし、これこそが、スラッシュ成形で出る特徴の一つです。アリバイは崩れたっ!って感じですね(^^)

なぜこういう構造が出るのかというのは後々説明するとして、続いてスラッシュの特徴を云々かんぬんしていきたいです。

スラッシュ成形で出る皮の厚みの誤差について
直接工場に聞いたわけではないですが、バレヒル方式も、スナプル方式も99%スラッシュ成形と思って間違いないです。しかし、各成形方法にはメリットとデメリットがあり、スラッシュ成形も、それなりの弱点があります。

スラッシュ成形の長所短所
※メリット・・・外形寸法が正確。
※デメリット・・内形寸法が不均一でバラつき多い。


です。

スラッシュ成形は、アウターのモールドに樹脂を肉付けしていく成形方法ですから、当然、アウターの形は正確に再現できます。そのため、ウォーターランドのシャフロッグなんかは、ウロコの形まで再現できていますよね。外側は正確なんです。一方で内側はどうでしょう。

このアマガエルの断面図を見て分かるとおり、内形寸法に関しては、完全に不均一。薄いところと厚いところでは、1mm以上の誤差が出ています。はっきり言って、内形寸法はバラバラ。

それは、モールドの形によって内部への熱の伝わり方が違うため、固まり易い部分、固まりにくい部分が出来てしまう上に、スラッシュでは樹脂を排出しなければならず、排出する際のタイムラグが出てしまい、これも不均一な内形を形作ることへとつながっていきます。

フロッグ以外のスラッシュ成形品も巷ではたくさん見ることが出来ます。

例えば、これ。プラの貯金箱。これはソフトバンク犬です。これも継ぎ目がない中空プラ製品で、当然スラッシュで作られています。

フロッグと同じように、未硬化の樹脂を抜くためのフックホールも付いています。

この中空構造体の内部を手で触ってみると、ボコボコ。赤で囲んでいるところなんて、ポコン!と出っ張っています。触ってみればスグに分かる。いかにスラッシュ成形が、内形が適当かが・・・。

じゃぁ、具体的に、どんな理由があって、樹脂の厚みにバラツキがでるのかと言うと、


・Rがきついところは樹脂が厚くなる
この図をご覧ください。これは、バレヒル式フロッグ製造用1枚モールドの断面図だと思ってください。この原型はケツの尖がった部分のRが鋭角に設計されています。

しかし、このモールドでスラッシュ成形をした場合、モールド外部から熱は伝わりますから、Rがきついところは、上下二つのモールドからの熱伝導が効率よく行われるということです。両側から加熱される関係で、どうしてもモールド内の他の部分よりも高温になります。モールド内に充填する樹脂は熱硬化型ですから、高温になるということは、樹脂が厚くなる。

すなわち、
こんな感じに成形が行われるというわけです。aとbだと、aの熱源よりもb部分の熱源のほうが多いので、bのほうが熱くなり、皮も厚くなるんです。

そのため、

アマガエルでも、Rのきついケツ部分は、最も樹脂が厚くなっており、2.45mm幅。

アルキデスでもアマガエル同様に、ケツのRの部分がとがっていますが、ここも樹脂の厚さは最大。

セサミも同様に、ケツのRの部分が最大の厚さです。

ゆえに、スラッシュ成形では、Rがきつい部分ほど、樹脂は厚くなるという特徴があるのです。

続いて第二段

・フックホール側が厚くなる
スラッシュ成形でフロッグを作る場合、最終的には中空構造にしなければならないため、固まっていない内部の樹脂を排出する必要があります。排出する穴は、フロッグの場合、フックホールです。そのため、スナプルにせよ、バレヒルにせよ、フックホールは必ず存在します。チューニングのために穴が開いているのではなく、成形上必要なのであいているのです。この時、固まっていない樹脂は重力によってフックホールから排出されるため、排出時に下部にたまります。フロッグで言うと、腹にたまってからフックホールから排出される形をとります。この時、生乾きになっている樹脂があると、フックホールにたまった際に固まってしまったり、まだ冷めていないモールドで新たに樹脂が積層されてしまい、ナンボかは厚くなります。そのため、スラッシュ成形では、フックホール側は他の部分に比べて厚いです。

アマガエルの断面図なんかを見ても、下側は1.85mmと、2番目に厚い数字をたたき出しており、上側よりも下側のほうがボディの厚みがあり、しかも、ボディ下側でもアイの部分からフックホールに向かって段々と樹脂が厚くなっています。これについては、ロデオのクロークでも同様の特徴が見れます。

ロデオのクローク。これもフックホール側が厚い。

セサミも同様にフックホール側が厚い。

つまり、スラッシュ成形のクセをまとめると、

スラッシュ成形では、鋭角の部分は樹脂は厚くなり、フックホール側は厚くなり、フックホールの周りで、最も厚くなる

という成形状の特徴があるのです。

スナプルがスラッシュと予想した理由
上で、スナプル=スラッシュと予想しましたが、その理由が、この足にあります。

甲の部分は中空。

足を切ってみると、そこは中空ではない。

これは、甲は上下から過熱されるのに対し、足の指は上下左右から過熱されるので、充填された熱硬化樹脂が固まってしまう。そのため、熱源の少ない甲は中空構造を保つことが出来、熱源の多い足の先は、ソリッド構造を持つ。つまり、モールド内に熱硬化樹脂を充填させ、外部から過熱させる方法で出る特徴とスナプルの内部構造が一致するのです。だからスナプルは、スラッシュ成形で作られていると考えられる所以です。このやり方だと、外部には継ぎ目があっても、内部には継ぎ目がないし。というわけで、やはりスナプルもスラッシュだと思われます。

以上のような成形方法やら、選択した成形方法の特性を考えながらフロッグを見てみると、現状のフロッグの原型設計時の悪さが色々と見えてきます。

しかし、スナプルのこの穴が付いている理由は分からんぞ
しかし、なんでこんなところに穴が開いてるんだろう!?モールドに穴が開いている?穴が開いていると、樹脂が抜けて、オイルバスに樹脂が流れるはずだし・・・・。うーん。分からん・・・・。

以上、バレヒル式・スナプル式の製造考察終わり!




続いて、




各フロッグの技術的考察
製造方法が分かれば、現在のフロッグの問題点の原因も特定でける!というわけで、各フロッグの技術的考察。


マンズのバラツキはなぜ起こる?
形のバラツキが最もひどいのがマンズではないでしょうか。

5個買うと、5個とも微妙に違う形で、フックポイントを隠す凸部分なんかは斜めになっているものがほとんどで、まっすぐのものを見つける事自体至難の業です。

また、真ん中がへこんでいたり、

はたまたボコッと出ていたり・・・まぁ、ばらつきのひどいことひどいこと。

原因→おそらく、モールドを作る際の電鋳メッキの薄さに理由があると思います。普通のフロッグは厚さが5mmくらいと言われてますが、マンズに関してはもっともっと薄いんじゃないかと思われます。モールドが金属である以上、高熱に長時間さらされると、ゆがんだりして、ダメージを受けます。モールドが厚いと、そのダメージによるモールドの変形はいくらか防げますが、ペラペラに薄いと、成形するたびに、モールドが変形するはずです。そのため、マンズはバラツキが凄まじい。モールドの廃棄タームを短くすれば品質は保持できそうですが、これもケチっているのか、これでもかというくらい使い倒していそうです。


目のクボミについて
フロッグにはバラして内側から観察した時、目のクボミがあるものとないものがあります。
セサミ。目のクボミがはっきり見えます。

クロークビック。クボミはほとんどなし。

ラッティツイスター。ジェリービーンJr。目のクボミなし。

理由は、
目のクボミがあるフロッグ=加熱時間が短い。=樹脂が薄い。
目のクボミがないフロッグ=加熱時間が長い。=樹脂が厚い。

目のクボミがあっても、積層する樹脂が厚くなれば、クボミは消えてきます。

じゃぁ、フロッグによって皮の厚みが違うのかというと、まさにその通りで、

自作フロッグ50号で、デカフロッグに挑戦してみましたが、薄く成形すると、ボディを支えることが出来ずに使い物にならないことが分かりました。でかいフロッグはボディを厚くしないと、使い物になりません。つまり、でかいフロッグはボディが厚いのです。そういう風にフロッグを見てみると、やりこいマテリアルで、大きさがおっきょいフロッグなんかでは、樹脂を厚くしなきゃいけないので、目のクボミはなくなっています。

分かりやすいのが同じ形状でこんまいのからおっきょいのまであるロデオのフロッグで、写真はクロークとクロークビックですが、

クロークビックは目のクボミがほぼないのに対し、クロークはクボミがはっきり分かります。これはクロークビックのほうがフォルムがでかいので、樹脂を厚くしなければ形状を維持することが出来ず、樹脂を厚くした結果、目のクボミが消えてしまったことを表しています。

また、ジェリービーンJrみたいに目がポコン!とニキビみたいに出ているものなんかは、樹脂が溜まりやすいので、成形時にそのクボミに樹脂が埋まったようになり、クボミは消えます。

たとえば、こういう金型に樹脂がへばりつくと、

こんなふうに、プラスチック樹脂が溜まりやすく、クボミを表現できるほど薄く成形できずに目のクボミはきえます。

これは透明なので、まさに他の部分よりも樹脂が厚く溜まっており、色が他の部分と違っているので分かりやすい例です。

つまり、やりこい樹脂を厚く成形するようなフロッグは目のクボミが消えます。

ただし、ハネクラのように硬い樹脂を薄く成形するようなフロッグでは、
目のクボミは残ります。やりこい樹脂を厚く成形するようなフロッグが目が消えます。


メーカーの原型設計技術について

各メーカーのフロッグのダメ出し。

単純に「俺が釣ってないからダメ」「俺が実績を出しているから良いフロッグ」などという曖昧な評価ではなく、成形方法から来る皮の特徴を捉えて原型を作っているかどうかを技術的に考察していきます。

注目すべきはケツのフォルム。フッキングの時に何が一番大事かというと、針に刺さりやすいかどうかで、これにはゲイブ周辺の柔軟性がキモとなります。つまり、ゲイブ周辺が柔らかいほどフッキングは良いということになり、ゲイブ周辺を柔らかくするための原型設計をやっているかどうか?これを考察します。

いわゆる、こういう、ケツのとんがった原型はいかんですね〜。とんがると、上下左右から熱が加わるので、他に比べて皮が厚くなってしまいます。すると、柔軟性が死んでしまい、フッキングは悪くなります。

理想的なケツフォルムというのは、部分部分によって、ケツの厚い部分がでにくい原型で、それはどんな原型かというと、

いわゆる、丸型に近い形状でしょうね。丸型だと、外部から熱が加わっても、熱の伝わりやすい部分、伝わりにくい部分というのがなくなります。ゆえに、均一なケツの厚みを確保することができ、これがゲイブ周辺の柔軟性に直結します。だからフッキングが良い。だから、スラッシュで究極に均一な皮を持たせようと思ったら、ボール型が一番でしょうね。だけど、ボール形だと、恐ろしくゲイブの広いフックを選択しなければならず、すると、コシが高くなりすぎて、雷魚のアタックで口の中に入りにくいというデメリットが出ます。だから、この形状を追っていきながら、雷魚の口に入りやすい原型を考えて作らねばなりません。

ではダメダし行きます。

ウィップラッシュ
LDムルヨン。
XOSR
アマガエル
これら全部、ケツのフォルムが良くないと思います。ケツの先が尖がっているため、ゲイブ付近の柔軟性が死にます。その分、マテリアルをやりこくして、デメリットをカバーしていますが、ケツがもう少し丸かったらもっと戦闘力の高いフロッグになるのではないでしょうか。

ZOD。
ZOR。ケツのRは、上下に絞っているだけで、左右からはそんなに絞ってない。ゆえに、スラッシュで出るケツ付近の肉厚樹脂は回避できています。ところが、フック前の凸のフォルムが良くないと思います。このようにきつい角度で原型を設計すると、モールド前後からの熱が加わり安く、樹脂が厚くなる。したがって凹みにくい。ここが凹みにくいと、フッキングの悪さに直結するため非常によくないと思います。

しかし、ウィプラは、素材をやわらかいので、この手の樹脂積層のミスをカバーしています。ゆえに、フッキングは良いと思います。が、ケツ付近を丸みを帯びさしたらもっともっと良くなると思います。


ラッティツイスター
セサミ。

バップ。ウィップラッシュと同じく、ケツをとがらせています。さらに、ウィプラは上下にケツを絞ってとんがらせていますが、セサミやバップは上下左右からケツのテンコツに向かって絞っています。このため、1枚モールドの4方向から熱が伝わることになります。ゆえに、ウィプラよりももっとゲイブ部分が厚く、硬くなっています。そして、ウィプラよりも皮が硬い。そのため、ゲイブ周辺の柔軟性は最悪で、贅肉カットの必要があります。ケツに丸みを帯びさしたらもっとよくなるはずです。あと、卵型形状からの脱却がキモとなるんじゃないでしょうか。

しかし、ジェリービーンは、ケツのフォルムが上下に絞っているだけで、左右からはあまり絞っていないため、バップやセサミに比べると、ケツは緩やかなRを描いています。ゆえに、スラッシュで出るケツの周りに積層する樹脂は少ないです。そのため、セサミやバップに比べると、原型設計は計算されていると思います。

新発売のドロップを見てみます。横に比較しているのは、セサミです。セサミは、全体的に長く、ケツのとんがりがかなりキツイんですが、ドロップは、セサミに比べると、ズングリムックリのオデブちゃん。そして、ケツのとんがり方もセサミに比べると甘いです。ゆえに、ドロップはセサミに比べるとだいぶ良い原型フォルムといえます。原型コンセプトが変わったのか、今後出るモデルも、ケツの尖り方を甘くしたフロッグにして欲しいなと思いました。




ロデオ
クローク。
ボン。これもウィップラッシュ同様、ケツが尖がりすぎです。そのため、この部分の樹脂が異様に厚く、なおかつウィプラに比べて皮の素材が硬いため、贅肉カットチューニングを施さないと使い物になりません。

全フロッグのケツの原型設計を見直して、特に、ケツのRを緩くするべき。もしくは、素材をもいっちょ柔らかくして、スラッシュで出る厚みの影響を消すか等の対策を採ったほうがいいと思います。ケツ以外のフォルムは最高で、ワタシの一軍選手なので、もっともっと釣れるフロッグになって欲しいです。


スミス
アルキデスを見る限り、ケツがとがりすぎ。グロッサも同様。グロッサオリジナルはマテリアルも硬くて、フッキングはほんと良くないと思います。

しかし、雷魚デントスあたりから、原型の設計コンセプトがガラリと変わっています。ケツのフォルムが緩やかなカーブを描き、左右にも上下にも甘いRを設定。これにより、ゲイブ周りの柔軟性は確保。どちらかというとデカフロッグの地位を確立しているにもかかわらず、薄く、凹み方も自然で、良い原型設計をしているなという印象を受けました。スラッシュの弱点を計算して原型を作っている感が伺えますw

これは、スラッシュのクセを計算して作られたフロッグだと言えます。

また、現在出ているKOZポッパーに関しても、全体的に丸みを帯びており、特にケツのあたりは、とんがりを嫌っています。ライギョデントスの原型設計コンセプトを受け継いでいる感が見られます。当然、こういう原型はスラッシュにかけても均一な皮になるため、凹み方もグッド。実際触りましたが、フッキングは良さそうでした。スミスは、スラッシュの弱点を克服するための原型設計を心がけていると感じます。

まとめ
今回、フッキングで最も影響が出やすい、ゲイブ周辺の柔軟性について原型のダメ出しをやってみましたが、スラッシュの計算しているな!と思うのは、スミスのみで、後のメーカーはどっこいどっこいではないかと思いました。

現行のフロッグに関して、ケツの絞り方をもっともっと甘くして欲しいなと思う今日この頃ですw



スナプル式とバレヒル式は、どちらが上?
昔のフロッグ事情がどうだったか、知らないんですが、新しいフロッグになって継ぎ目がなくなったと聞いたことがあります。ホントかどうか知りませんが。

確かに、大昔のジャクソンのケロッピーなんかは、継ぎ目があるし、継ぎ目があるのとないのとでは、ないほうがキレイだし、継ぎ目を消す技術というのは後から出来た技術っぽいし、スナプルは昔からあって、バレヒルは比較的新しいので、スナプル式が旧型でバレヒル式が新型と思う人も多いかもしれませんが、よくよく、上で述べた成形方法を考えてみると、

案外、逆ではないのか?

なんて思ったりします。

バレヒル式の場合、金型を作る技術は、ロストワックス法ですよね。ロストワックス法は、もともとがジュエリーを作るための技術であり、貴金属等のジュエリーは古代エジプトの遺跡からも発見されている通り、大昔からあった製造方法です。

一方、継ぎ目のあるスナプル成形はどうでしょうか。継ぎ目は、プラスチック成形をする以上、必ず出てくるバリであり、プラスチック成形は現代の技術です。

そもそも、凹面2つの金型を作る上では、原型ってどうやって作っているんでしょうね。

バレヒル式のように、電鋳メッキ+ロストワックスだった場合、原型を作るときに使われるのは、粘土もしくは、ワックスのインゴット。

これらは、カッターとかスパチュラで用意に加工できます。いわゆる、「人間の手で原型を作り上げる」と言うアナログなやり方です。

一方、スナプルみたいに、凹面2枚モールドってのは、いったいどうやって作っているんでしょうか?もし、ロストワックスを使うのであれば、1枚モールドになってしまいますから、継ぎ目は消えるはずです。ゆえに、スナプルはロストワックスは使ってないはずです。

となると、やはり一般的な複製手法みたいに、型剤の流し込み×2による、2面型製造をするのでしょうか?

しかし、プロ成形が、シリコンでやるはずがなく、十中八九、金型はアルミのはずです。

ってことは、溶融アルミを流し込む?ならば、原型は耐熱素材でないといけません。

粘土やワックスを使った場合、耐熱素材ではないので、アルミの流し込みで原型は木っ端微塵に黒こげになるはずです。

ゆえに、まともな金型にならないはず。ならば、陶土を使って原型を作り、焼成によってセラミック化させているのでしょうか?しかし、それだと、2面モールドを作るときに、土台もセラミック化しなければならず、焼成過程でナンボか縮んでしまうので、2面モールドの接点の精度に問題が出てきそうです。だったらば、アルミのインゴットを手作業でマニシング加工?絶対無理!!!



うーん。



2枚モールドのアルミ金型って、どうやって作るんな?

やっぱり、素人では分かりませんね〜。と、悩んでいたとき、仕事で、岡山のゴム工場(インジェクション成形)の製造課長さんと話す機会があったので、ここぞとばかりに質問攻めをやってみました。

ゴム分野も、プラスチック成型と同様に、流し込み+攪拌+圧縮による生産ですから、モールド製造関係は全く同じはずです。

聞いてみると、「原型は作ってない」そうです。

じゃぁ、どうやって?

それは・・・・3DCADで直接オス型メス型の金型の設計図を描き、多軸NC旋盤にかけるだけ。

なんと・・・原型作成などというアナログなことは一切やっておらず、パソコンで書いた設計図を自動研削装置(これがNC旋盤ね)に放り込んでモールドを作り上げているそうです。

流し込む成形装置によって、作る金型の大きさが決まっており、歩留まりを上げるために、1回の成形作業で、より多くの製品が出来るように金型を設計するそうです。

ちなみに、旋盤と言うと、チャックに挟んだ物体を回転させ、固定したバイトを使って研削するというイメージがありますが、それだと、円錐形の左右対称構造のものしか出来ません。しかし、軸数が2軸3軸4軸5軸と増えていくと、旋盤みたいな研削から、フライス盤みたいな研削も出来るようになり、研削角度の自由が利くようになり、自由度の高い金型が作れるそうです。NC旋盤自体、私にはなじみがないので良くわかりません。詳しい人がいたら、教えてください。

なるほど、ナゾはすべて解けました!!!

つまり、スナプルは電子制御の研削装置を応用して作られていた可能性が高いわけです。スナプルが原始的な成形?とんでもない!原始的なのは、バレヒル式のほうです。

いつだったか覚えていませんが、ポパイの強靭スナプル企画だったか、足をなくした物を作れと指示してみたが、スナプル社はNOと答えていたと思います。もし、スナプルがロストワックスで作られているなら、マスター原型からワックス原型を複製し、足を切り取って再度複製し、電鋳メッキにかければ、コストはほとんどかけずに、要求をクリアできますもんね。

しかし、それが出来ない理由があった。それは、原型自体がなかったからではないでしょうか。

アルミのインゴットを削り込んで作っていたなら、足だけカットなんてことをしようと思ったら一から金型設計+自動研削をやり直さないといけませんもんね。そんなコストはかけられないでしょう。だから出来なかったんではないでしょうか。



スナプルの大きさのバラツキの考察
オレンジパケのスナプルは、ボディの大きさがバラッバラです。しかし、極薄モールドのロストワックスなら、熱によるダメージで変形して大きさが変わるかもしれませんが、スナプルみたいな、金属インゴットの研削による金型製作であれば、少々の熱ダメージでも、そうやすやすと変形はしないと思います。なら、なぜ大きさが違うのか?についての推測ですが、今はNC旋盤があるので、金型の凹みは正確に具現化することが出来るかもしれませんが、スナプルがいつ発売になったのか知らないですが、スナプルが設立されたのが1950年。定番となっているキャストフロッグがいつ作られたのかわからないですが、1980年代?おそらく、NC旋盤なんてシロモノはなかったはず。多分、手作業で金型を作っていたのではないでしょうか。すると、手作業の誤差が出てしまい、1個1個の大きさが違う金型が出来てしまい、出来たスナプルの大きさもバラバラ。しかし、青色パケ以降、ボディのバラツキはなくなりました。ここいらから、NC旋盤の導入があって、ボディのバラツキがなくなったのではないでしょうか。よって、今巷で人気の、デカスナプルも、NC旋盤で金型を作っている可能性が高く、ボディのバラツキの心配はないような気がします。






究極のフロッグって何やろ???

じゃぁ、スラッシュが一番なんか!?

というと、

それは違うでしょうね。

スラッシュが一番良いのは、見た目です。継ぎ目がなし、目の形やウロコの形まで再現出来るのはスラッシュのみ!ですが、

これみたら分かるように、

皮の厚みを均一にすることに関しては、スラッシュは最悪。厚み誤差が最大で1.45mmも出ています。

見た目が良いヤツは、たいしておいしゅうない。むしろ、見た目が悪くても、美味ってのが、お決まりです。

やはり、

皮の厚みが均一なフロッグが一番性能が良いと思いますね。

一箇所が凹んだら、他もその凹みに追従して凹みやすい。しかも、厚みの誤差がないから、バイト後、フッキングで、雷魚の口の中をフロッグが滑る場合、厚い部分がないから、抵抗なく滑っていきます。これこそが最高のフッキング力が期待できるというモンです。

また、厚みが均一になるということは、形状を維持できるギリギリの厚みに挑戦できるというわけです。現状のスラッシュフロッグの場合、形状を維持するために厚みを確保すると、厚い部分がさらに厚くなり、そこがフッキングに影響が出てきます。ボンビなんて、最たるものです。釜ゆでしないと硬すぎて使い物になりません。

皮の厚みが均一にできるならば、これら、形状維持にかかる厚みマージンを大幅に減らすことも出来ます。



スラッシュ成形のように、部分部分によって、樹脂の厚みが1mm以上も違うような成形では、理想的なフロッグは一生出来ません。




メーカーが理想的なフロッグを開発しようと、スラッシュで煮詰めていっても、極限形には絶対に辿り着かないでしょうね。

皮の均一なフロッグ・・・・

これが作りたいんです。


今、


挑戦中。


かなーーーーり時間がかかっていますが、


必ず作ります!!!

詳しくは、作った後に!

では、またいつか、この話題でwww




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