ダブルラッピングの軽量化


メインロッドが折れてから、次なるメインロッドを組んでいるわけですが、どうしても硬くて長いロッドじゃないと香川では使い勝手が悪いため、そーゆーロッドを組むわけなんですが、その上で無視できないのが軽量化です。

ガン7なんかは「硬い太い重い」の代名詞みたいなロッドで、戦力はあるんですが、ナンボなんでも使いにくすぎというわけで、「老舗の古ロッドをいかにマイルドに仕上げられるか?」最近のロッドビルディングはそこにテーマを置いています。

使いやすくする上で最も効果的なのが、ブランク部分の軽量化。雷魚ロッドは重量が重い上にバランス完全無視で先重りがひどいため、ブランク部の軽量化で操縦性は飛躍的に良くなります。

メーカーもこの部分に目を付けており、ブランクを軽く仕上げ、操縦性の良さをうたい文句にしており、昨今の雷魚ロッド事情は軽量化合戦といった感じです。

ところが、ブランク積層方法である、シートワインディング成形で使用されるカーボンシート自体の比重はおおむね同じで、軽くするには必ず薄くしなければなりません。

そこで、メーカーはこぞって、高弾性カーボンを薄く積層し、「軽くて硬い」を実現しているように見受けられます。

確かにそれで軽くなるんですが、反面失うのが耐久性です。

ブランクは曲がった時に、一方が伸び、一方が縮むという、相反する力が加わりますから、その異なる力を吸収できるかどうかは、太さにかかっているといえます。吸収できなければ、パァン!と折れるわけです。

特に、雷魚ロッドでは、ドラグをガチガチに締め、伸びないPEを使って、クギみたいな針を思いっきり雷魚の口にブッ刺すという荒いフッキングをしますから、ブランクはフッキング時に一気に伸び、一気に縮むため、ある程度の太さは必須条件と思います。

この太さを確保するためにはブランクの細身化が有効だと思われ、同じ長さのカーボンシートを使うならば、太いブランクよりは細いブランクを巻いたほうが肉厚に仕上げられます。オオノロッドの場合、BHSボロンが380gなのに対し、マッシブは315gしかありません。しかし、ブランク径がボロンが16φなのに対し、マッシブは15.4φです。軽くなった分、細身にして、ブランクの肉厚を保っているのでしょうか、しかし、細くなった分、柔らかくなっており、全体の硬さはボロンの圧勝だと思います。

こんな感じで、各メーカー、こぞって、細身のフニャチン軽竿をラインナップに迎え、「新モデルは何gですわ!軽いでっせ〜!」って感じで、道具を売り込んでいますが、他にやり方はないんかいな?とよく思うんです。

まずはガイドです。ステンガイドとチタンガイドで比較した場合、軽量化の上では確実にチタンガイドのほうがアドバンテージがあり、数gの軽量化が出来ます。

ところが、昨今の雷魚ロッドを見てみたところ、チタンガイドを導入しているのは希で、ほとんどがステンガイドです。

軽量化に重きを置いているのは明白なのに対し、使っているのがステンというのはどういうことでしょう?

昨今、雷魚ロッドといえば、5万オーバーで、ステンのシングルラッピングが定番となっております。定価に5万もつけるんなら、オールチタンでいけよな!って思うんですよね〜。ここだけの話、フルオーダーで雷魚ロッド作ったって、5万くらいのモンですよ。メーカー品が5万オーバーというのはいかがなものでしょうか。それなら、フルオーダーで雷魚ロッド組んだほうが何倍も良いというものです。

そして、ワタシが思う次なる軽量化の方法は、ブランクスルー方式です。現在、全ての雷魚ロッドがグリップジョイント、もしくはテレスコの2pcブランクとなっております。

グリップ脱着式のメリットは、作るのが楽な反面、どうしても重くなってしまいます。

重くなる理由は、ブランク側よりも一回り太いストレートパイプを使う必要があり、そこに無駄な肉が付いてしまうからです。





図解するとこんな感じ。ガン7で話をしますが、ガン7の場合、17φでジョイントしますから、グリップ側は内径17φのパイプを使う必要があり、そこから20φのリールシートにつなげるため、パイプ外径は20φになっています。つまり、17φのブランクを使うのに、パイプは20φのものが必要なのです。


また、2本継ぎになってしまうため、接合部のカーボンは2重になってしまい、その部分の重量が無駄に増加します。

これがブランクスルー方式だったらどうなるかというと、




接合部でカーボンが2重になることがないため、その部分の重量がへずれます。さらに、可能なのかどうか知りませんが、17φの外径をそのままストレートにバットエンドまで持っていくことが出来れば、ガイドラッピング&コーティングの後にグリップを組むことも可能で、作業性の面でもメリットはあります。

これが実現できれば、リールシート、チェック、グリップ素材全てが17φのものが適応でき、全てのパーツに於いて軽量化が可能となります。

ブランク部分は、極太、極硬、極重ロッドのままで、なおかつ軽い。

夢のようなロッドですね〜www

どのメーカーも、硬いカーボンシートの薄巻きで、軽量化することしか考えてないような気がしますが、他にも方法はあると思うんですよね〜。

あと、ついでなんで、言っちゃいますが、「軽い=売れる」と思っているのか、メーカーが新型雷魚ロッドを発売する時には、「OOOg!」というデータをこれみよがしに出してきます。

販売店である釣具屋も、「なんと雷魚ロッドでOOOg!」なんて謳い文句をつけて商品をアピールしていますが、これにも疑問を感じます。

少々重くても、その重い理由がバランサーであれば、問題がないからです。むしろ、バランサーなしで軽いほうが使いにくいことが多々あります。

というのも、フロッグのアクションはキホン、シェイクのみです。シェイクのみならば、先重り状態のロッドはハッキリいって使ってて疲れます。それならば、スペック上のデータは重く表示されますが、何gのバランサーをつけて、重心がリールシート付近に来るようにしています。と謳って販売してくれたほうが、ユーザーにとって優しいと思います。

そもそも、軽さをアピールする背景には操作性の良さをアピールしたいという下心があるからで、それならば、バランサーによる操作性の良さを加えても良いと思います。

嗚呼!

大幅に脱線しちゃったけど、兎に角、俺が言いたいのは、


軽量化を狙った時に、硬いカーボンシートの薄巻きにばっかり逃げるんじゃねーよ。他にも選択肢はあるだろ?


ってことなんだよなw

若干、愚痴ブログっぽくなっちゃったけど、話を戻すど!

上で訴えたことは、マンドレルとカーボンシートの巻きつけに関することなんで、個人のビルディングレベルで狙ったところで出来るわけがないです。

軽量化に注目した時、チタンガイド化は当然として、その先、個人のビルディングレベルでやれるとしたら、ナンなのか?

私が思うのは、ラッピングとコーティングです。

今回狙っていくのは、ダブルラッピングの軽量化です。雷魚ロッドは、藻団子の綱引きの時にガイドがよくきしむので、ダブルラッピングは必須です。しかし、ダブルラッピングの目的はガイドのフットをブランクに干渉しにくくすることであり、だったら、フット以外の部分にラッピングもコーティングもいりません。

つまり、ガイドのダブルフット間のラッピングをキャンセルすることで軽量化を図る。

今回はこれを検証します。

所詮、コーティング重量なんてロッド全体の重量からすれば微々たる物かもしれませんが、その微々たる軽量化を狙っていきます。少しでもいいから、軽量化につなげたいわけです。素人のビルディングレベルで、へずれる部分はここ以外にないと思います。

初の試みだし、ラッピング&コーティングしながら重量変化を見ていき、フット間のコーティングキャンセルでどれだけの軽量化が出来るのかを数値化していくことにします。

まずは適当なカーボンパイプを用意します。重量は16.6gです。

パイプ径は外径11φです。一般的な雷魚ロッドは、ティップ3mmのバット17mmですから、平均とって3+17÷2=10だもんで、約10mm径のパイプを使用しています。

続いてガイドを用意します。思うに、フット間が長いほど効果が出るはずなので、使用するガイドサンプルはチタンのLC16Mです。で、下巻きの範囲を決めてマスキングテープで印をつけます。

で、下巻きのラッピングをします。使用したスレッドはジャストエースのメタリックのAで、ラッピングの長さは8.2cmです。

重量は16.9gです。ラッピングにより、0.3g増加しています。

そして、1回塗りのコーティング。UVコートのソフト:ハード=2:1(重量比)の接着剤をスレッドの表面がでこぼこするくらいの薄塗りをしています。

重量は17.4g。0.5g増加しています。

その後、2回塗りで、糸目を消しました。重量は17.7g。0.3g増加しています。

続いてガイドです。T−LC16Mですが、総重量が21.2gになりました。ガイド重量は3.5gです。

そして上巻き。ラッピング距離は2cm。ジャストエースのCです。

重量は21.3g。0.1g増加です。

そしてコーティング。

こんな感じの薄塗りですが、

重量は、21.5g。0.2g増加しています。

その後、2回塗り。コーティングはこんな感じになり、

重量は、21.7g。0.2g増加しています。

その後、3回塗り。実戦では2回塗りくらいで仕上げるのがベストだと思いますが、データ取りということで。

重量は22.2g。0.5g増加しています。表面張力で滑らかな接着剤のカタチをつくるので、下地が盛ってくれば、キレイなコーティングにするために必要な接着剤の量も増えますね。

続いて、残ったフットのラッピング。ラッピング距離は2.1cmといったところ。

重量は22.2g。ハカリで変化が分からないくらいの重量増加です。下側ラッピングもそうでしたが、0.1g程度でしょうね。

で、1回塗り。

重量は22.4g。0.2g増加。

2回塗り。

22.8g。0.4g増加。

3回塗り。完成。

重量は23.0g。0.2g増加。

で、目標だった軽量化。フット間の下糸を切る。

重量は22.4g。0.6g軽くなっています。

以上、表にしてまとめると、こんな感じ。

下巻き8.2cm コーティング@ A 上巻き2cm コーティング@ A B 上巻き2.1cm コーティング@ A B
+0.3g +0.5g +0.3g +0.1g +0.2g +0.2g +0.5g +0.0g +0.2g +0.4g +0.2g

※パイプ径11φで実験。重量測定は条件を統一するために、UV8分照射の完全硬化後に行っています。

これを見る限り、Aスレッドを使おうが、Cスレッドを使おうが、あまり重量に影響はなく、むしろ、重量増加については、コーティングが及ぼす影響が強いことが分かります。

さらに、+0.5gクラスの重量増加については、長距離コーティング及び、上巻きのモッチリコーティングなので、軽量化をにらんだ場合、出来るだけ長距離コーティングをやめて、薄塗りで仕上げることがキモだということが分かります。

続いて、新ダブルラッピングで及ぼす影響の数値化ですが、一般的なダブルラッピングによる重量増加はスレッド+樹脂分合計で、2.9gになっています。で、フット間のスレッドをキャンセルすることにより、0.6g軽くなっていますから、

0.6÷2.9×100=20.7%の軽量化になっています。これが8個9個のセッティングになってくると、影響はバカに出来ません。

ちょっと面白くなってきたので、ここらも完全数値化して比較してみようと思いますw

用意したのは、雷魚ロッドで一般的に使われるガイド3種類、MN、KW、LCです。サイズはこれまた雷魚ロッドで使われる8〜16です。

で、測定するデータはこれです。Aはダブルフット上側の長さ。Bは下側の長さ。Cはフット間の長さ。DはA+B+Cです。

A,Bについては、フット先端から足の下側が水平になっているところまでの長さ。

フット間については、ガイド裏側から見て、フット下が水平になっている根元からスタートし、フレームが絞られたところまでとしています。

なお、LC16は逆付けバットガイドとして使われるため、LC16Mのデータを採用。さらにA,Bのデータを逆にしています。


すべてノギスで測定した結果がコチラです。




このデータを元に、スレッド及び接着剤の条件を入れて行き、ラッピング及びコーティングの総重量を仮想計算していきます。

コーティングテストの結果、下巻きのラッピングに関してはAスレッドが82mmで0.3g増加なので、4mg/mm。また、下巻きコーティングの場合、82mmの2回塗りで、0.8g増加となっているので、9.8mg/mmとします。あわせると、下巻きにおけるラッピング+コーティングによる重量増加は、4+9.8=「13.8mg/mm」です。

続いて上巻きですが、Cスレッドが20mmで0.1gなので、5mg/mmとします。また、3回塗りで仕上げたとして、20mmで0.9g増加しているので45mg/mmとします。あわせると、上巻きにおけるラッピング+コーティングによる重量増加は、5+45=「50mg/mm」です。

そして、ガイドセッティングですが、標準的な10個セッティングとして、

T8、8×3、10×3、12×2、16×1と仮定し、ラッピング及びコーティング重量を出してみます。

例えば、トップガイドはMNST8-3.0を使うとして、フット長が8mmなので、3回塗りとして、増加スレッドおよび樹脂分は50mg/mm×8.0mm=400mgとなります。

そして、ダブルフットガイドの重量計算の計算式ですが、

(13.8mg/mm×D)+(50mg/ml×(A+B))

としています。

前カッコが下巻きラッピング+コーティング。後カッコが上まきラッピング+コーティングです。

MN、KW、LCにおいて、計算をしてみると、このようになります。



MNガイドで10個セッティングの場合は、合計9.3g。KWになると少し重くなり、9.9g。LCガイドで大幅に重くなり、12.8gとなっております。やはり、フット間が長くなると、コーティング重量も比例して重くなり、LCが際立って影響が大きいです。

LCがゴツくて、糸がらみがなくて良い!とは思いますが、軽量化に注目した場合はデメリットになりますね〜。

ここで、新考案のダブルラッピングを導入するとどうなるかというと、ガイド表のデータで言うところの、

各ガイドのラッピング及びコーティング重量 ― 13.8mg/mm×Cmm

で出ます。

こうして計算してみると、

こうなります。


※素データと計算で使ったエクセル

これを見て驚いたんですが、ガイド径がでかくなると、MNとKWは12を堺にコーティング重量が逆転するんですね。

んで、肝心の軽量化における重量変化の影響は、やっぱり、フット間が長いほど効果があって、MNは14.0%の軽量化、KWは17.9%、LCが24.4%の軽量化が実現できています。

数値的には、新ラッピングを採用することにより、LCガイドは3.1gの軽量化を実現できます。ただ、これは11φのパイプへまきつけた際のデータですが、実際は、バットは17φで、なおかつガイドは下に行くほどでかく、フット間も長くなっていくので、軽量化効果はむしろ大きくなると思います。

この3.1gという数字ですが、ステンガイドの倍近い値段を払ってチタンガイドを導入し、実現できる軽量化は6.2gですから、コーティングの仕方を変更するだけで、約3gの軽量化が出来るというのは、めっけもんかもしれません。

ということは、雷魚ロッドで、LC10個セッティングで組む場合、フルチタン&新ラッピングの採用で、6.2+3.1=9.3gの軽量化が出来ます。

ガイド部の軽量化はモーメントにより、リールシートへの効果が倍増されますので、案外イケルかもしれませんよ〜w

若干めんどそうですが、次に組む重量級ロッド、Jraiden復活で導入してみたいと思いますw



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