打倒!!!エポキシ化学!!!

※結構専門的な話になったので、私の尊敬&頼りにしているファイナルダムンのガムルチーさんみたいなタイトルにしました♪

オフシーズンしかビルディングをやらないので、1年ぶりのビルディングは「???」の連発です。

フレックスコートで硬化テストをするときに

どっちがレジンだっけ!?

硬化剤と主剤、どっちを少なくするんだっけ!?

ってな感じになって・・・・・

フト思いました。

なんで、主剤(レジン)を多めに入れるんな????
epoxy resin=エポキシ樹脂

フレックスコートの注意で、「少しでも硬化剤が多いと硬化不良を起こし、一生固まりません。」というのは有名。

なんで???

というわけで、なぜ、レジンを多めに入れるのか、調べてみました。

ところが、その理由についてはどこサイトにも載ってませんでした。

というわけで、エポキシの固まる原理を調べ、考察しました。




エポキシの原理
そもそも、エポキシ樹脂は、樹脂が固まる前の中間生成物とのことです。ポリマー(同じような分子が何個もくっついて出来る巨大分子)になる直前の樹脂で、プレポリマーと呼ばれます。

このプレポリマーに、硬化剤を混ぜます。硬化剤は、プレポリマーとプレポリマーを捕まえ、網目状の巨大分子を形成します。つまり、鉄パイプを捕まえて出来たジャングルジムみたいな感じです。ジャングルジムの鉄パイプがレジン、硬化剤が溶接棒みたいな感じです。分子同士は網目状に絡まりあっているので、流動性はありません。これが、固まったエポキシ樹脂の正体というわけです。固まったエポキシ樹脂を加熱すると、分子の熱振動が加速されるわけなんで、くっついたジャングルジムはバラバラになります。すると、固まった樹脂は流動性を取り戻します。熱を加えると、柔らかくなるというわけで、エポキシ樹脂は、熱可塑性樹脂とも呼ばれます。熱を加えても、状態変化しか起きず、、分子の物性が変わるわけではありません。そのため、またくっついて固形樹脂に戻ります。
※2011年からのメッセージ。それは熱可塑性エラストマーです。ワームです。エポキシは熱を加えると溶けると同時に焼けます。2液接着剤は一度硬化すると、もう未硬化の状態には戻れません。この熱硬化樹脂でもないので一体何と呼ぶのか、ご存知の方いましたら、ご教授ください。

この物性を利用してエア抜きをします。塗ったばかりのエポキシに熱を近づけると、粘性が下がり、さらに熱によって内部に入り込んだエアは膨張します。膨張することによって比重が軽くなりますので、比重の軽いエアが粘性の下がったエポキシの上部へ向かって抜けます。通常、アルコールランプを利用する理由は、不完全燃焼が起きるかどうかです。アルコールランプの燃料はメタノールで、不完全燃焼が起きにくく、炭化が起きません。ライターでやると、ライターの原料はブタンガスで、ブタンは、不完全燃焼を起こしやすく、炭化します。炭化すると黒くなるので、エポキシが黒くなってしまうというトラブルが起きます。

←炭化したエポキシ樹脂。

だからアルコールランプを使います。ということは、ジッポーでやれば問題なしでしょうね!

硬化剤は種類によって、プレポリマーと結合する速度や特徴が違うので、各々の物性の違いを利用して、速効型・遅効型のエポキシ樹脂があります。




エポキシ樹脂の構造

レジン
レジンの正体は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンと呼ばれるややこしげな有機物質です。構造式はウィキペディアより。
ビスフェノールAとエピクロロヒドリンが何個もくっついて(共重合して)プレポリマーになっています。

        ビスフェノールA            エピクロロヒドリン            プレモノマー(レジン)

プレポリマーのカッコの右下にnという文字がありますが、これは、カッコで囲まれた分子がnこあるという意味です。重合の仕方によって変わるみたいです。
プレポリマーの両端にエピクロロヒドリンがありますが、これがエポキシ基と呼ばれる官能基で、こいつが、硬化剤中の活性水素と結合し、三次元網状の巨大樹脂を形成します。


硬化剤
硬化剤の中には反応性に富む活性水素があって、それがプレポリマーのエポキシ基と反応します。
硬化剤は、むっちゃ種類があります。1000種類くらいあるそうです。硬化剤によって、エポキシ樹脂の物性が決まるので、用途によってむちゃくちゃ種類が多いです。目的の樹脂を作るために、配合比選定専門の業者もいるくらいです。いくつかグループ分けされているので、とりあえず、調べてみると


脂肪族アミン
最も一般的な硬化剤。常温硬化でき、耐熱温度100度。強靭で接着性が強い。耐水性も抜群。ただ、有機溶剤には要注意みたい。

芳香族アミン
接着に発熱が必要。

変性アミン
硬化時間が8時間くらいと長く、エポキシ基と反応せずに余った場合、アミンアダクトちゅう物質に変性。この分子が大きいのでそのまま硬化。そのため、秤量誤差が少ないそうです。だったら、普通のエポキシとは逆に、硬化剤が多いほうが安定した硬化皮膜が得られるということか???

ポリアミド樹脂
エポキシ硬化剤として、一般的に広く使用されている。硬化速度が比較的遅く、硬化剤自体の分子が大きいため、結合が硬く、エポキシ樹脂の中では高い剛性を持つ。

3級及び2級アミン
プレポリマー同士が結合する時に、触媒として働く。アミン系、ポリアミド系の硬化促進剤としての利用が多い。

イミダゾール類
硬化時間が比較的長いが、プレポリマーとの反応には80度〜100度の熱が必要なものや、100度〜180度まで加熱すると、一気に硬化が起こるものもある。

ポリメルカプタン類
2分〜10分で反応する速効性硬化剤。

酸無水物類
電気絶縁体としての応用が多く、電子部品の接着等に用いられる。

潜在性硬化剤
長期にわたって樹脂を保存する力に優れ、熱光圧力をきっかけにして、反応が一気に進む。

光紫外線硬化剤
紫外線に当たったら、反応が進み、硬化する。

代表的なグループのほんの一部みたいですが、もはや専門的になりすぎてて、サーーーッパリ分かりません。一般的に使われる硬化剤は、アミン系、ポリアミド樹脂が多いそうです。

ちなみに、東邦産業NTエポキシコート、クリスタルレジンは、硬化剤に変性ポリアミンを使っているそうです。


なんで、硬化剤を少なめ入れるんな?その1
ハッキリ言って、専門的過ぎてサッッッッッパリ分からないので、あくまで私の考察です。

分子の大きさの違いによる説
プレポリマーに使われるビスフェノールAとエピクロロヒドリン

分子量は
ビスフェノールA=228
エピクロルヒドリン=93

ビスフェノールAがエピクロルヒドリンによって重合すると、プレポリマー分子中にn個存在し、それを挟むようにエピクロルヒドリンが2個付くので、

プレポリマーの分子量=228×n+93×2=228n+186

nは1〜5を取る時が多いみたいなので、最大値5と仮定すると、

プレポリマーの分子量=228×5+186=1326

一方、硬化剤ですが、硬化剤表の一番最初に出てきた

ジエチレントリアミンを硬化剤と仮定すると、

分子式はC4H13N3 / NH2CH2CH2NHCH2CH2NH2で分子量=103です。

つまり、分子量はレジンが1個1326に対して、硬化剤は103です。

分子量の大きさと、分子の大きさは相関性があって、ま、分子量が大きいほど、大きさも大きいって感じです。

ということは、レジンと硬化剤だったら、レジンのほうが圧倒的に大きいということになります。単純に分子量=大きさとすれば、レジンは硬化剤の10倍くらいの大きさです。

ということは、硬化したエポキシ樹脂では、分子の配列は
こんな感じでないでしょうか。黄色=レジン、赤色=硬化剤です。レジン同士を硬化剤が橋渡しをしてくっついています。


で、硬化剤が多いと
こんな感じ。配合ミスで余った硬化剤=うす緑色で表現してます。硬化剤は、小さいので、樹脂化したエポキシの隙間をスイスイと動き回れます。つまり、余った硬化剤分の流動性があり、硬化不良→皮膜薄い現象になります。

逆に、レジンが多いと
こんな感じ。余ったレジンは水色で表現してます。レジンは分子自体が大きいので、樹脂化したエポキシに挟まれ、身動きできなくなります。そのため、レジンが多くても、流動性がなく、硬化不良にならない→皮膜硬い現象となります。

このため、硬化剤よりもレジンを多く配合したほうが失敗が少ない!といわれるのではないでしょうか。




なんで、硬化剤を少なめに入れるんな?その2
硬化剤の種類で登場した変性アミンの特徴を見てください。
エポキシ基と反応せずに余った場合、アミンアダクトちゅう物質に変性。アミンアダクトは分子量が大きいので、安定した樹脂を得られる。これと同じような感じで、あまった主剤を巨大分子に変えてしまい、流動性をなくす。結果、安定したツルツルカチカチの皮膜を得ることが出来る???


とまぁ、私の頭ではこれくらいが限界でした。誰か詳しいことを知っていたら、教えてください。




なんで、硬化剤を少なめに入れるんな?その3
エポキシは架橋構造です。レジンが硬化剤橋げたにして、巨大な橋のような構造を作ります。多分こんな感じ。

で、硬化剤が多いと

多分こんな感じ。橋げたの間を縫って、余った硬化剤が抜け出てきて、動き回るのでは?それで、硬化不良の樹脂をひっかいたら、硬化剤が橋と橋の間に入って、跡が付く???

で、レジンが多いと、

多分こんな感じ。レジンはデカイので、橋の間に引っかかって、動けなくなって、硬くなる???。とはいえ、橋げたを構成するのがレジンなんで、この図の大きさには無理があるような・・・・。




硬化不良の起こる原因

ビルディング関係のサイトでよくある、フレックスコートの配合留意点、「レジンよりも硬化剤が少しでも多いと、一生固まらない!」

ウソです。

ホンマなら、証拠みせてん!私はずっと信じてましたが、あれは都市伝説だと思います。皆それを信じていて、わざと硬化剤を多めに入れたことがないんじゃないでしょうか。固まります。

そもそも、エポキシは、上で説明した原理のように、プレポリマーのエポキシ基と硬化剤の活性水素があれば、反応は進みます。

レジンよりも、硬化剤が多いと、レジンの数だけ、硬化剤が反応します。

たとえば、レジン95、硬化剤100で配合した場合、レジン95が硬化剤95と反応し、残った硬化剤5が硬化出来ずに残ります。しかし、5÷(100+95)×100=2.7%の硬化不良樹脂が、なぜ、「全く固まらない」とまで言われるのか、疑問です。というか、ウソです。

大げさに、レジン50、硬化剤100で配合したら、硬化するエポキシ樹脂は100で、硬化剤50が余るわけですから、33%も硬化せずに硬化剤が余り、全く固まらない現象が起きるでしょうが、ほぼ同量配合した場合、まず、硬化します。ちょっと硬化剤が多いくらいで、樹脂全部が固まらない現象なんて起きるわけがありません。ただ、硬化後の皮膜強度が問題です。5%くらい流動性のある分子が出来ると、それが皮膜の若干の弱体化を促し、ツメで押さえつけると、傷が付く現象が起きる可能性があります。

実際に硬化剤多めで実験してみました。
↓フレックスコート ハイビルドの硬化後樹脂
レジン:硬化剤=2.2:2.5で配合した皮膜。固まってます。

ただ、皮膜が、硬化剤少な目配合樹脂よりも弱く、ツメで強めに引っかくと、傷が残ります。

↓フレックスコート ライトフォーミラの硬化後樹脂
レジン:硬化剤=2.2:2.5で配合。ハイビルド同様固まってます。

ツメで強く引っかくと傷が入ります。

やっぱり、ちょっとくらい硬化剤が多くてもちゃんと固まります。

固まらないのではなくて、固まりが甘くなるのです。これを硬化不良と呼ぶのです。

この時フト思ったんですが、

皮膜が弱い!うんぬんは、配合が出来てないからではないでしょうか。

まず、エポキシの配合には、
こんなカップや

こんなシリンジでやります。

15分から20分で、粘性が上がって、薄くぬれなくなるスレッドコーティングでは、何度も作り直す必要があるため、ビルダーは、5ccずつとか、2.5ccずつ検量して樹脂を作ります。しかし、5ccとか、2.5ccの検量では、結構な検量誤差が出ます。

カップについている目盛りが、まずそんなに正確ではありません。シリンジの目盛だって、どれだけ正確か、疑わしいモンです。

さらに、シリンジでは、液を吸い込む時に100%気泡が入ります。この気泡が誤差となります。

さらに、シリンジから、カップに流し込む時に、最後の1滴が入るかはいらないかも誤差になります。

さらに、混ぜる時だって、フチに硬化剤だのレジンだの、こびりついて反応せずに残ってしまう事だってあります。これも誤差です。

これをなくすためにはどうすればいいかというと、検量を多くすることです。

たとえば、2.5mlシリンジで1回の検量で、0.05mlの誤差が生じるとすれば、

0.05÷2.5×100=2%誤差です。レジン・硬化剤二つ検量するので、樹脂内の誤差は2+2=4%です。

250mlシリンジだったら、2.5mlのシリンジ誤差よりも誤差は増えるはずですが、全体量が多いので、1回の検量誤差が0.5ml出たとしても

0.5÷250×100=0.2%誤差です。

レジン・硬化剤二つあわせても0.4%です。

検量する量が多ければ多いほど誤差は少なくなります。

ヨットビルダーでもコーティングにエポキシ樹脂を使っているみたいですが、50ml以下の検量で、正確なエポキシ樹脂を作るのは不可能と言ってます。

そもそもが、正確な検量をしたいならば、MLではなく、重量で行くのが正しいスジというもんです。

MLは人間の目視で行われますが、重量だったら計量器によってできます。計量器は、0.00001gのものなんかもあるので、かなり正確に表すことが出来ます。

ロッドビルディングで使われるエポキシなんかでは、かなりシビアにやらないと硬化不良になるため、ML配合ではなく、重量配合でやらねばなりません。

チューブタイプのエポキシなんかでは適当に配合したって、硬化不良にはなりませんので、検量誤差を打ち消すような硬化剤を使っているんでしょうね。

しかし、今回の話は、ロッドビルディングのエポキシですから、シビアにやるべしです。

エポキシの硬化不良とその対策に続く・・・・。



異種エポキシの配合
ふとおもったんですが、考察してみると、エポキシは、レジンが同じです。(ビスフェノールA型)となると、硬化剤を別のメーカーのものを使っても硬化するのではないか?

というわけで、東邦産業エポキシとフレックスコートハイビルドの硬化剤を混ぜてみました。

ミキシングカップの目盛りで計量し、東邦レジン:フレックスハイビルド硬化剤=10.5:9.5ってとこです。

混ぜたら恐ろしくサラサラwww東邦産業のエポキシがサラサラなので、これが影響していると思われます。






そして・・・・・





固まった!!!!!

二日後、完全硬化。恐ろしく粘性が低いので、アルコールランプ使ってないのに、エアが全く入ってません。気になる皮膜はツルツルピカピカ、ツメで傷が付きません!

思ったとおり、

硬化剤を変えても、硬化するということが分かりましたw

こいつについては、アルテマエポって名づけましたw


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