自作FRPパイプ


雷魚ロッドは、ブランクスの差込口が16パイを超えると、カーボンパイプがなくなります。そのため、使えるパイプは純正のみ。ところが、純正のパイプが短くて使いにくい場合は、延長しなければなりません。しかし、市販品がない!



何が言いたいかというと、ガンガンや、サーペントのグリップが作れんということです。



だったら自作で作ってやれ!


というわけで、自作のFRPパイプに挑戦しました〜。

の、前に、
FRPってなんぞや?
FRPというのは、Fiber Reinforced Plasticsの略で、強化プラスチックのことです。プラスチックだけだったら強度が弱いのですが、このプラスチック樹脂の中に、ガラス繊維やカーボン繊維といったものを混ぜることで、プラスチックが強くなります。これが強化プラスチックです。釣竿もこのFRPの一種で、

エポキシ樹脂にガラス繊維を混ぜたもの=グラスエポキシ=グラスロッド

エポキシ樹脂にカーボン繊維を混ぜたもの=カーボンエポキシ=カーボンロッド

と、こんなふうに分かれています。ちなみに、釣竿でつかわれるFRPは熱硬化型のエポキシで、マンドレルにアイロンで端をつけた後にローラーで巻きつけていって、電気炉で熱して固形化。その後両端を切ってマンドレルから外して成形されます。

ただ、エポキシは高いので、一般的にホームセンターなんかで手に入るFRP樹脂はポリエステル樹脂です。ポリエステル樹脂は、エポキシに比べると、割れやすく、引けが多く、気泡が入りやすく、臭く、ま、いいことないですね。


ほんだけんど、ジョイでみつけたFRPセットを物色してチャレンジしてみましたw

これがガラスクロス。ホームセンターで10cm50円くらいです。


これに、FRP用の樹脂を付けます。主剤と硬化剤を混ぜて、それをガラスクロスに付けます。すると、樹脂が染み込んだガラスクロスがFRPに変化します。


ガラスクロスをパイプ状にするので、巻きつけるパイプが必要です。今回は、アルミパイプを買ってきました。これが外径18パイなので、まきつけたら、内径18パイのFRPパイプが出来上がるはずです。


ためしに、ガラスクロスをアルミパイプに巻きつけてみました。



全然巻きつきません!


ネットで勉強してみると、揉み解すと柔らかくなって巻きつきやすいとのことだったんで、モミモミしてみました。手でやったらガラス繊維が手に刺さりっぱなしになって、すごくカユイので、百均で、ビニール手袋を買ってきて使いました。


しかし!モミモミしていると、ガラスクロスの繊維がどんどんほどけてきて、形がワヤになっていきます。


それでも全く巻けん。


両端のハシッこなんて、コレですよ(涙)


しかし、考えても始まらないので、とりあえずやってみることに。


FRPがパイプになったときに、アルミパイプを引き抜かなければならないので、アルミパイプが抜けやすくするようにグリスを付けます。


アルミパイプにグリスを塗りたくりました。


で、樹脂を作ります。主剤100gに対して、硬化剤1gを添加します。水あめのようです。温度によって入れる量が変わるみたいです。寒くなると、硬化剤をよっけ入れなければならんみたいです。


エポキシ用のシリンジでぶち込みました。


ハケで塗りたくります。樹脂が付くと、ガラスクロスが縮んで、水あめのように柔らかく、ネトッとなって、パイプに巻きやすくなりました。


それでも、やっぱり巻きつけはゆるいです。それと、ガラスクロスの繊維があっちこっちに飛び出ています。


このままだと、きっちり内側にテンションがかからないので、マスキングテープで内側に追い込みます。そんで、1日待ちます。


後片付け
アセトンじゃないと、樹脂がのかないとのことなので、使った道具をアセトンで洗いました。しかし、アセトンが高い!1リットル2000円くらいします。
ビニール手袋は、アセトンでのくっちゃのくが、所々水あめがへばりついていて、ネチョネチョ。捨てました。ハケはきれいになりましたが、乾くと樹脂の残りが取れずに硬くなりました。持つところは、水あめのついた手袋で洗ってたんで、そちらから樹脂がついて、これもネチョネチョ。捨てました。

で、気づいたんですが、2個の道具を洗うアセトンを200mlくらい使いました。ということは、200円の道具を洗うための洗剤が200円するということです。

いやー、損益分岐点越えてます。

基本道具は使い捨てで!ということがよーく分かりました。


で、完全に硬化して、カチカチに固まったFRPパイプ。これがパイプか!?そして、抜けないアルミパイプ。


もう撃沈という言葉しか浮かびません。

しかし、初めての作業で良い経験になりました。次はこうは行きません。

自作FRPパイプリベンジ

で、ネットで調べていくと、このFRP積層というテクニックはむちゃくちゃ奥が深いです。むっちゃ樹脂と硬化剤の種類が多くて、3液混合液とかまであります。主にどこで使われているかと言うと、バイクの自作カウル。飛行機のラジコン自作パーツで使われています。また、釣り分野でもたくさん使われているみたいで、おそらく、シートワインディング製法ってので、ブランクは作られています。マンドレルをテーパーロッドにすれば、いけますモンね(^^)

http://www.hopec.jp/

で、奥が深くて、用途がむちゃくちゃあるということは、これに詳しくなれれば、どんなパーツも自由自在というわけです。調べていくと、すんごいうまいことカーボンパーツを作っている素人さんも、たくさん居て、俄然やる気が出てきました。マタギの7.1雷魚ブランクなんて、モロに、カーボンクロス積層でカーボン柄作ってますね。


で、リベンジです。


まず、FRP用不飽和ポリエステル樹脂。これがむっちゃクサイ上に、ベットベト。手に付くとアセトンでしか取れん。このカンカン、フタがでか過ぎて、調合するときにハカリに垂れて、掃除がワヤ。だってアセトンで拭くんですが、アセトンで拭くと、ハカリの塗装が剥げます。ほやきん、垂れない容器に入れます。ホームセンターで500円で売っていたスチール缶1リットルにロウト(100円)で移し変えます。ロウトは使い捨てってか、この樹脂が付いたら掃除で使うアセトンで100円超えますから、安いモンはすべて使い捨てにしています。


続いて塩ビパイプと離剥剤のグリス。本来ならシリコングリスがいいみたいですが、家にバイクのクラッチ修理で使ったリチウムイオングリスがあったので、これ塩ビパイプに塗りたくって、剥離を良くしました。


で、ガラスクロステープ。前回、目の荒いクロスでひどい目にあって、ハシッコがばらけたらいかんことが分かったので、今回は両端がしっかり編みこまれているクロステープにしました。コレが1mで600円でした。安い。


テープを解くと、お決まりの、ハシッコ解けが出たので、マスキングテープで止めておきました。


で、塩ビパイプに巻いていくも、重なる部分でヨレてしまって、うまく巻けません。


だもんで、重ならないように巻いていきました。どうせ、もう一回クロス巻いてトップコートするので、下が少々ずれて、隙間が開いていても関係なしです。


で、追い込みテープですが、テープがクロスに全く付かずに、追い込み出来なかったので、インシュロックで締め上げて、止めていきました。コレはなかなかの出来栄えです。1mの塩ビパイプで、外径18ですから、内径18のFRPパイプが出来る予定です。で、長さですが、Jraidenで使っている、愛知のイシグロ製カーボンパイプが70cmで使いやすかったので、これも70cmにする予定です。


そして、FRP積層樹脂の配合をして、ハケで塗りたくりました。調合は、不飽和ポリ樹脂100g。硬化剤(パーメックN)1.5mlにしました。70cmで、ちょうど使い切るくらいの量でした。


乾きました。ガラスクロスが、ささくれみたいになって、触ると痛いです。さらに、樹脂が生乾きのような感じになっており、所々ネチャネチャするし、鼻を近づけるとクサイです。硬化不良???さらに、樹脂のノリがいい部分、悪い部分があって、出来栄えは最悪です。


で、これを塩ビパイプから引っこ抜かないとパイプにならないため、インシュロックを切って、これから抜きます。


び、びくともしない。もう全く動く気配がありません。カナヅチでたたき倒しましたが、それでもびくともしません。


もう絶対に抜けないので、はたして、塩ビパイプ+離剥剤があっても、食いついているもんなのか検証するために、ジグソーで真っ二つにして、様子を見ることにしました。


簡単に外れます。離剥剤に問題があるわけではないです。でも、パイプにしたら、抜けないのです。

おそらく、ポリエステル樹脂は引けが大きいので、収縮したぶん、ガッチリとカタに密着して外れなくなったことが予想されます。


3度目のリベンジ

あきらめてたまるか!次はまた工夫してやって見ます。


まずは樹脂のネバ付きの原因解明。


で、この不飽和ポリエステル樹脂ですが、硬化するときに、空気に触れると、硬化不良になり、表面がべたつく現象が起きるみたいです。その上にさらに積層する場合は、べたついたほうがくっつきがいいので、いいんですが、トップコートとかになるとべたつきは使いにくいので何とかせないけません。
そこで使われるのが、パラフィンと呼ばれるワックス。パラフィンを入れると、空気を遮断してくれるみたいで、カラッとした出来になります。
そこで、FRP樹脂には、パラフィンが最初から入っているものと、入っていないもの2種類があります。前者をインパラフィン(インパラ)、後者をノンパラフィン(ノンパラ)と呼びます。
つまり、私が体験したベタ付きは、パラフィンによるものだと感じました。
しかし、私のFRP樹脂を見てみると、インパラだったので、カラッとするはずなんですけどねぇ・・・。

もしかしたら、気温の関係で、パラフィンが足りなかったのかも。

そこで、パラフィンを買ってきました。これを樹脂に添加して、ベタ付きを回避します。

まずは、塩ビパイプにリチウムイオングリスを塗りたくって、離剥剤にします。


続いて使うのは、ガラスクロスの150番。目の細かいヤツです。


広げてみると、薄いタオルのようで、めちゃくちゃフワフワしてます。


これは、そんなにバラけないんで、テープでハシを保護する必要がなかったです。


で、樹脂は、ポリ樹脂100、パーメック1.5、パラフィン3で配合しました。塗ってみると、むちゃくちゃ薄い・・・・。薄すぎて、コシがないというか、ハケで塗るときに、目がバラバラになります。


完全に固まったら、100%抜けないのは、前回の失敗で分かっているので、若干べたつきが残っているときに抜きにかかりました。すると、引っ張った拍子に、繊維がバラバラ。。。あかん。生乾きで引っこ抜くのも無理。


で、樹脂ですが、カラッとした出来栄えになりました。やっぱりパラフィンを入れたほうがいいみたいです。


うーん。


硬化したら離剥できず、生乾きで引き抜くと、繊維がめくれ上がって、使えない・・・・。これは難しいです。そもそも、FRP積層は、メス型に樹脂を押し付けて、バイクのカウルなんかを作る技術が主なので、パイプを作るやり方が載ってません。

そもそも、出来るのか!?

あきらめようかとも思いましたが、


ネバーギブアップ。


新しい方法を考え付きました。懲りずに、またチャレンジしてみます。まず、外径が17パイ以上のホースを100cmほど買ってきます。そのホースにスッポリ入るように、塩ビパイプかなんかを買ってきて、ホースの中に突っ込みます。そして、ホースの上に離剥剤を塗りたくります。そして、ホースの上にFRPを積層していきます。


完全硬化後に、まず、塩ビパイプを引き抜く。ホースとの間に接着剤はないので、頑張れば外れそうです。そして、今度はホースを引き抜く。ホースは、中空でフニャフニャしているので、回しながら引っ張っていくと、抜けそうな感じがします。


こんなやり方で次回やってみます。


やっぱし止めた!
調べてみると、どうやら、FRP樹脂で使われるポリエステル樹脂は、痩せが大きく、強度が弱いことが分かりました。
FRP樹脂はポリエステル系、エポキシ系とあって、一般的なのは、ポリエステル。性能はエポキシのほうが上。だけど、エポキシは高い(ポリエステルが3000円なのに対し、エポキシ10000円。)ので、嫌われている模様。
だけど、強度はエポキシのほうが強く、痩せもエポキシのほうが少ない。曲げ強度、溶剤の毒性、どれをとってもエポキシに分があります。
http://www.woodencanoe.net/archive/build/frp.html
詳しくは、このサイト様に詳しく載っております。

また、普通のカーボンロッドなんかも、カーボンとエポキシで構成されています。
http://www.fishing-friend.com/SHOP/rood_211-1.html
懐かしのフレンド♪ちょーさんの釣り情報が懐かしい・・・・。
■使用材料 カーボン75% グラス 25%
■使用樹脂 エポキシ樹脂  
と書かれていますよね。つまり、一般的なロッドは、カーボン繊維を骨材にして、エポキシ樹脂で成形されているのです。だから、作るなら、エポキシ+カーボンです。ポリエステル樹脂は却下!

で、ポリエステルの最悪なところは、痩せ方。ものすごい痩せます。痩せるということは、パイプにより密着することを表しています。そのため、パイプをメス型にして引っこ抜こうとしても、縮んでいて抜けない抜けない。だから、やるなら、エポキシのほうがよっぽどやりやすいと思われます。しかし、エポキシ樹脂1kg買うことを考えたら、値段が高すぎる。どうにもこうにも。自作FRPパイプは不可能というか、これ以上頑張っても全く意味がないような気がしたので、凍結します。


かぶれた
積層作業をした服ですごしていたら、色々なところがカユイ。ガラスクロスはあまり人体にいいものではなく、作業中に、バラけたガラスクロスが色んなところにくっつき、かゆみが続きます。ちなみに、ガラスクロスを使った作業をした場合、絶対バラけて、ガラス繊維が色んなところに飛び散ります。特に吸い込んだら喘息・肺炎にもなりかねん最悪な物質なので、マスク必須。また、服につきやすく、それがのきにくいので、なるべくツルツルした服を着て作業をするのですが、それでも服に付きます。ガラスクロスを使った作業をした後は、2日くらい、かゆいのが続きます。そして、ついに湿疹が出始めたので、私の体質と相性が最悪の模様です。ガラスクロスを使う作業は危険です。なるべくなら、バラけるガラスクロスは使わないほうが無難。やっぱりカーボンです。とはいえ、カーボンもバラけるけど。


驚くべき事実
思ったよりもワンオフFRPパイプが安い!
http://www.hopec.jp/frppipe/
この会社にワンオフでFRPパイプを作ったらどれだけかかるか見積もりを出してもらいました。結果は、17.2×20.0×700で、5000円
思った以上に安いです。17.2というのは、すでに削りまくったガンガンのブランク差込口をエポキシで塞いでしまおうと思い、若干大きめにしました。17.0にしたら、規格パイプなんでもっと安くなると思われます。

http://www.featherfield.co.jp/
一方、こちらで、見積もりを出してもらうと、17.2mmは規格外なので数万円かかるといわれ、もし17.0×20.0×700で6150円かかるといわれました。

もし、
どちらかに注文を出すとしたら、上記のホーペックです。値段も安いし、細かいサイズ設定も相談に乗ってくれるし、釣竿を作っているという技術力もあるし。

ということはですね・・・・

5000円あれば、ガンガンのパイプは作れるというわけなんです。

で、FRPパイプを作るための初期投資が、おおかた、6000円ってところです。ということは、この時点で、損益分岐点は負になるので、ワンオフで作ってもらったほうがいいパイプが安く出来るというわけです。

別のところで、タックルネットでカーボンパイプを買ってきて削ることもやりましたが、タックルネットのカーボンパイプが2500円で、送料が800円ですから、取り寄せるだけで3300円。これに、しんどい加工が待っているわけです。どう考えても、ワンオフのほうが得!

つまり、自作FRPパイプを作ること自体が、意味がないことでした。

まぁ、この作業を通じて、積層というのがどういうことかが分かったんで、それはそれでプラスですが、目的が、極太カーボンパイプを入手することなんで、本末転倒です。

で、結局、ガンガン77のカーボンパイプは、「カーボンパイプ内径拡張作業」にてアップしました。

結局、自作FRPパイプは徒労に終わったけど、積層の勉強になってよかったwww


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