自作ワインディングチェック



ワインディングチェックを自作する!

ロッドビルディングで地味に金がかかるのがグリップビルディングで使用するワインディングチェックをはじめとするデコレーション系のメタルパーツです。

通常はアルマイトを施してあるアルミパーツですが、これの値段が大体1個500円。

で、ケチらずにセパレートグリップを組むために必要なメタルパーツは、フォアグリップのチェック上下2個。リールシートのトリガー真下のリング1個。リールシート下のグリップの下部のチェック1個。リアグリップの上端のチェック1個。リアグリップとグリップエンドの間に仕込むリング1個。の計6個。

ということは、この時点で3000円必要なわけです。が、グリップビルディングはそんなに甘くない。往々にしてあるのが、当初の計画よりも多くのメタルパーツを組み込むことです。Jraidenかどこかのグリップビルディングで述べたと思うんですが、グリップを組んでみて、当初の予定通り組み上げるのは稀で、己のイメージの具現化が進んでいくと、必ず、

「あっ、ここ、気に入らない!」

とか

「あっ、ここにメタルパーツを追加するとさらに見栄えが良くなる!」

となります。ブランクの場合、ブランクの色と、つけるガイドとスレッドなんて、自分の好きな組み合わせでいくし、もともとのブランク+ガイドという形は、決まっていますから、大きな計画変更自体がそんなにありません。一方、グリップは、常に持つところであると共に、魚の横で撮影することも多い、いわゆる、ロッドの顔です。

そして、自由度も高い!となれば、計画変更はガンガンあります。

んが、チェックを売っている釣具屋自体がほとんどないので、いちいちまた注文して1週間くらい待って・・・なんてことをやっていると、時間がかかってしょうがないし、余ったパーツは次で使えるので、大抵は、当初の予定よりも多めに買います。

また、ストレートのカーボンパイプでやるときは内径が一緒なので、そこまで種類を揃える必要はないですが、讃岐の夢みたいな、1本竿のテーパーブランクに組み付けるときなんかは、コルクを付ける位置によってチェックの径が変わりますから、当然、多くの径のチェックを揃えておかないといけないです。

すると、多くの種類を多く買い込む必要があり、今までの経験で言うと、大体、当初の計画で必要なパーツの倍近い数を揃えます。

すると、大体、1本作るのに、3000円×2の6000円がチェック代として消えていくのです。

つまり、金がかかる!

以上は、コスト的な面での自作チェックの必要性です。

んが、しかし、雷魚ロッドの場合、物理的な理由から自作チェックの必要性があります。

雷魚ロッドは、多くの場合、リールシートはTDPS20(内径20mm)を使用しています。これはブランク自体が太いため、リールシートも太くなるからです。

ちなみに、フジのベイトリールシートは最大で内径22mm(旧型サーペント705についてたやつ)ですから、もうこれ以上ないくらいの太さだと思って良いです。

一方、ロッドビルディングで花形と呼ばれる分野は何かと言うとそれは餅論、バス釣りです。

そりゃ、身近に釣れて、道具はライトからヘビーまで様々で、やってる人口が多くて、凝るヤツも多いとなれば、当然、ビルディングをやってるヤツも多いのが現実です。

となれば、ビルディング用品のメーカーもそこを狙ってくるわけで、ビルディングに必要なパーツも、メインはバス用を意識しています。

んで、ここが問題なんですが、バス用で最もヘビーとされているカーボンパイプが外径17mm。そのため、グリップを組むためのパーツは最大で内径17mm以下のものがほとんどです。

コレを超えるものは規格外のような扱いで、パーツの選択肢は極端に減ります。ココがライギョの痛いところで、グリップを組むパーツの選択肢がホント少ないんです。むちゃくちゃ細いシャドウライズでさえ、カーボンパイプ外径は17mm。だけど、若干誤差があるため、バス用のメタルパーツは運がわるけりゃ付きません。どれだけ雷魚ロッドが規格外なのか分かるかと思います。シャドウライズはかなりキャシャなので、それがバス用の限界で、普通の雷魚ロッドなんて、ほとんど規格外。パーツの選択肢はなきに等しいと思って良いです。

で、かゆいところに手を届かせるために、マタギが内径17mm以上の規格外のチェックを0.5mm刻みで作っています。いわゆるHTWC−Lのチェックです。色の種類がたくさんあって、これは選択肢があるほうです。しかし、最大で内径18なのでシャドウライズクラスの細身の雷魚ロッドしか使えません。ガンガンとかは無理!

内径18を越えると、もうD20VF、D22VF、コレのみです。すごいでしょw(※HTWC−Zもあるっちゃあるけど、フォルムがダサすぎ。オールドタイプを彷彿させるようなチェックなんて付けてられるか!そして、アレはメッキが甘く、剥がれる。)

しかし、ここでもやはり制限があって、D22VFのチェックは、内径は22ですが、外径が28.4なのです。

この28.4がまずいんです。

実は一般的なグリップで使われる、コルク、エバは、外径が27か28です。

だから、28.4のチェックを使った場合、コルクからチェックがはみ出してしまうので使えないのです。

これを使おうと思ったら、外径が33or34のコルクを使わなければなりません。

しかし、それも規格外なので、高い。

エバはそうでもないんですが、

コルクがやばい!Jraidenで使った34-380のコルクなんて4000円ですよ!!!

そんなこんなで、

雷魚用として使えるチェックなんて、D20VFくらいのもの。

しかし、これも問題があって、外径が26.4なので、外径27のコルクはツラッツラすぎて使えず、外径28のコルクにしないといけません。さらに、私のグリップビルディングを見るとわかるとおり、カーボンパイプの精度ってのは結構アラが多くて、外径20パイといっても、場所によっては20.5とかザラにあります。だもんで、D20VFを使った場合、内径加工しないと入らないっつーわけです。

そのため、雷魚ロッドにおける理想的なチェックというのは、

こういうヤツなのです。まず、外径が26mm。これで、27mmのコルクでもツラッツラにならず、あわせれます。加えて、内径は20.5。20.5にすることで、TDPS20のシートを使うカーボンパイプで、精度誤差があったとしても、余裕で入ります。たとえ、精度誤差がほとんどなくて、キッチリ外径20mmのパイプであっても、どうせ、スレッド巻いてコーティングにかけるので隙間は隠せます。こういうチェックが自作できれば、雷魚用としては、最高のチェックができるというわけです。

一応、フジに、このサイズはあります。んが、釣具屋に注文したら、作ってないからもう手にはいらんの一言。悲しい・・・。

それゆえ、作らんといかんのです。ついでに、どこにもないようなデザインで作ったらしびれるので自作してしまおうというわけです。

2011年からのメッセージ
KDPS17用のチェックの内径が20.5で、ベストフィットだそうです。


一般的なビルダーの自作チェックは、旋盤を使って、金属を削りこむといったところ。しかし、旋盤なんて持っているはずもなく、だったら、自作フロッグでやったプラスチックの成形テクニックを使おうかと思い、やってみることにしました。

とりあえず、複製の練習からしてみようかいのというわけで、

適当なメタルパーツを複製することにしました。

使うのは「ほいく粘土!」粘土はやはりコイツです。250円。百均ねんど(青緑)は原型に残るのでNGです。

麺棒で平らにする。

パーツを並べる。

シリコンを配合して、

流し込む。1日待って固まる。

粘土を剥がす。ほいく粘土は剥離性がよくて、すんなりキレイに剥がれてくれます。

バリを取ってシリコン型の完成!

しかし、ワインディングチェックが取り出せん!しまった〜!この手の作業はあんまし考えないでやると、後々後悔します。

仕方がないので真っ二つにきって取り出しました。

で、次に樹脂の流し込みですが、切った部分で樹脂がはみ出したらいかんので、輪ゴムでとめました。これも丸型だったらやりにくいので四角い形にすればよかったと後悔・・・。

で、流し込みの樹脂ですが、余っていたホビー用2液ウレタンを使います。ノンキシレントルエンなんで、室内作業でも出来ます。ただし、目が痛くなるので、要換気。

ひょっともれたらいかんので、シリコン型のなべの中に入れて流し込むことにします。

ウレタンの検量。

粘性はサラサラです。だけど、攪拌後10分もすれば、固まってしまうので迅速な作業が要求されます。

混ぜた樹脂を小さいポリカップに移します。

シリンジでシリコンのなかに押し込みました。ところがここでトラブル。太いメタルパーツは流し込めるんですが、薄いメタルパーツは樹脂が型の中に入っていきません。

ワインディングチェック。アヒャヒャ。

フードナットスペーサー。アヒャヒャ。強度が弱くてスグ割れた!こりゃ、ウレタンより強いエポキシのほうがいいかも。

デコレーションリングになるかな!?と思って、太目のバランサーウェイトも型取ってみると、これはいけそうです。

うすっぺらいリングは、強度が弱すぎて割れる。

唯一いけたのが、ウィードフリーカーの純正チェック。これは太いのでいけました!

なんとなくコツがつかめました!

というわけで、

再チャレンジ。

普通にほいく粘土を広げます。

で、100均いって考えながら、使うのが野菜の型抜き金型げっと。

で、チェックを置いて、型抜きます。

すると、これで簡単にシリコンの流し込みの受けが出来ます。

底から漏れたらいかんので、ガムテでふさぎます。そして、テフロン箱に入れて

シリコンを流し込みました。

取り出します。

このほいく粘土の剥離性がたまりませんw

これで半分完成。

あとは反対側にもシリコンの受けを作ります。

まずバリを取ります。

で、シリコンの型の上からシリコンを流し込むと、シリコン同士がくっついてしまい、型でなくなるので、離型剤を塗ります。ミスターホビーの離型剤。フデで塗ります。

そんで、ガムテで台座をつくり、シリコン流し込み。

で、1日経って硬化完了。

ガムテを剥がして、原型を抜き取る。

がしかし、抜き取る時にシリコン破損。キャスト時に流れないとは思うけども、ちょいとカタの取り方を考えたほうがいいかも。

んで、今回はワタシの知ってるエポキシのなかでは抜群のシャバシャバ具合であるクリスタルレジンUを使うことにしました。細い湯口から自然落下を狙ってもおそらくは落ちないと思うので、75円のミシンオイル指しに一旦混ぜたエポキシを入れ、先っちょを細い湯口につっこみ、レジンを注入することにしました。

結果、こんな感じ。

3日間乾燥。

しかし出来たものは、フニャフニャ!スレッドにかけるとカチカチになるのに不思議じゃ〜。なんでやろ!?

あと、気泡がガンガンかんでおり、エッジにでかい気泡が逝ったヤツはエアのぶんだけかけております・・・。

なかなかに難しいです。

で、そのまま外で乾燥させていて、2,3日経過。

フニャフニャしていたものは完全硬化して、カチカチになりました!

しかし、柔軟性がナンボかあります。ウレタンはこれがないので、やるならウレタンかな?

そして、ネックは気泡。気泡が噛みまくって、バリだらけでかけているものや、

エッジに気泡がかんでかけているもの、

これはうまくいったか?と思いきや、気泡が・・・。

ラッピングのコートとは違って、後から気泡を抜くことが出来ない上に、狭い場所に注入するのでこれがなかなかに難しく、うまくいくかどうかは時の運。

エポキシとウレタンだったら、ウレタンのほうが硬いし、粘性がサラサラで気泡がかみにくいので適していますね。ならば、次は最終章。ウレタンをオイル指しに入れて注入。これでだめだったら無理です。不可能です。他に考えが浮かびません。

たのむよ〜!

で、ずんずんいれていったわけですが、5分くらいで、手で触れないくらい発熱し、

あれ?出ないなと思ったら、容器の中でかたまっとる!

結局、型の8割くらいしか注入ができなかった。ホビーキャストNXウレタンは可使時間が短すぎるのが難点じゃね。だいたい5分。

できたプラ成形品を見てみると、

やはりネックは気泡。ワインディングチェックはエッジに気泡が噛んでへこんどる。全滅乙。

前はうまくいった太いチェックも気泡が噛んで死亡。おそらく、粘性が上がり始めた時にキャストしたんやね。残念。

こ、これ無理やん。

難点は、やはり、気泡。これをどうにかしないと、欠けた製品が出来上がってしまいます。うまくいくかどうかは時の運なんで、ホンマ当てになりません。小さいパーツ、薄いパーツは気泡で思いっきり欠けるのが多いので、これはダメ。今実験で使ったのが、ウィードフリーカー用の内径18パイは細いのでダメダメ。だけど、雷魚のスタンダードの20パイはうまくいくかも・・・。

次、20パイのチェックでやって、ダメだったら、この実験は終了。無理です。

んで、20パイのチェックで型取って再チャレンジ。今までの失敗で、気泡がかむといかんことが分かっているので、今回はエア抜きしました。ライターでアブってエア抜き。だけど、熱くて、完璧なエア抜きができんかった・・・。

で、これはフードナットのカラー。こいつは深すぎて、全く抜けず。こりゃダメ。形状的に薄いものしか複製は出来ないです。取り出せない。

で、これが出来上がったチェックなのですが・・・

やはり気泡が完璧に抜けていない。

こっちも同様。

完璧なモノが一個も出来ない。予想以上に難しいぞ。複製チェック。

で、こんどはチャッカマンでエア抜きして、やってみますた。

今度はいけるだろうとおもったけども、出来たウレタンは、全部エアが入っており、死亡。

原因が分かった。

この、NXホビーキャストは、混合後、しばらく時間が経ってから気泡が発生するのです。詳しくは自作樹脂盛りシール参照。だもんで、このキャスト剤を使う限り、エアがかむので、完璧なワインディングチェックは出来ないというわけ。

で、これなら、フレックスコートとかのエポキシを使えば気泡の問題は解決なんですが、エポキシは柔軟性のある樹脂なので、ワインディングチェックにするには、柔らかすぎ。表面は硬いんだけどね・・・。

だったら、ホワイトメタルとかの低融点金属のキャストでやるという手もないことはないけど、果たして、スズとか、鉛含有の合金に塗料が乗るのかどうかが微妙。というか、そこまでするんだったらば、合金が高い(大体、200g3000円くらい)上に、加工+塗装してまで使う気力がないというか、出来あいのマタギアルミチェック使ったほうが楽で、お徳。品質もいいしねw

だから、自作チェックは、機械旋盤の削りだしでやってる人が多いのね。理由が分かった・・・・。


というわけで、


にっちもさっちもいかん、このカタ取って複製するという作戦は、

めでたく、

ぎぶあっぷ

とのことで。

結構頑張ったんだけどな〜。投資はほとんどしてないけど、あの手間と苦労は何だったんだ・・・



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