クリスタルレジンの可能性



今現在ロッドビルディングで一般的に使われるエポキシといえば、フレックスコートHB,LF、東邦NT、ジャストエースですが、これらのエポキシには弱点があって、まず、フレックスコート、ジャストエースは硬化剤が黄色です。

そのため、分かりにくいんですが、レジンと硬化剤を混ぜるとわずかに黄色になります。

スレッドが赤とか黒とかだったら全く分からないんですが、白いスレッドを使うと良く分かります。はなから紫外線で黄ばんだような色になっています。東邦NTはレジン・硬化剤共に透明なので、仕上がるエポキシも透明。

これなら白いスレッドを使ってもきれいに発色しますが、東邦NTは、強度が問題。100:85配合だったらば、ツメで簡単に傷が入り、100:75配合だとキズは入らないけれども、レジンと硬化剤の結合数が減ってしまうため絶対的な強度が落ちます。

そのため、ロッドビルディングで一番良いエポキシは、透明(あらゆるスレッドの色に対応可能だから)で、粘性が低く(スレッドの間に染みやすいため)、硬化不良になりにくく(配合を100:100に近づけさせることが出来るので、強度が確保できる。)、硬い(ヤブコギでキズがつきにくい)エポキシですが、上記のビルディング用エポキシではなかなか難しいです。

で、東急ハンズでひょっと見つけたんですが、これ

クリスタルレジンU

瓶を振った感じちゃぷちゃぷいっているので、粘性の低さはバッチリだと思われます。そして、クリスタルとの名の通り、高い透明度を誇るらしいです。クリスタルレジン1ってのもありますが、2のほうが透明度が高いみたいです。そして、嬉しいことに重量配合です。ビルディング用エポキシは全て容量配合なので、カッチリとあわせるのが出来ないので、重量配合のほうが100%良いですが、初めから重量配合が書かれているため、わざわざ比重を測定する手間が省けます。

ちなみに重量配合の比率は100:40という特殊なタイプ。

スペックデータは、可使時間が50分。完全硬化48時間。東邦と同じくらいかな?で、硬化剤が変性ポリアミン。これは東邦と同じですね。

これはもともとが造形用のキャスト素材ですが、ビルディングでも応用できるならばやってやろうと思い、実験してみることにしました。実験はネーム入れでやる長距離コーティングです。

で、まずは5g:1.8gでやったろうかと思い、ミキシングカップにスポイトで入れました。レジンは粘性が高く(東邦NTの硬化剤くらい)、スポイトでは吸いにくかったですが、なんとか完了。

そして、硬化剤。こちらは粘性が低く、スポイトで簡単に入れることが出来ました。

混ぜてみると、なんちゅう粘性の低さ!これほどサラサラなのは、サラサラの東邦よりもさらにサラサラです。1回目のコーティングでスレッドに染みさせるならば、これが一番適しているような気がします。においもしませんw

見てんこのサラサラ具合!これだけサラサラだと、エアが全くかまないし、コーティングしたって、エア抜きする必要なし!スレッドによくしみこみそうやぁ!

んが、問題も一つ。さらさらすぎて、弾く弾く。そして、ネバさがほとんどないので、長距離コーティングで、均一に塗ることが至難の業。タレながら回っていくような感じです。やはりキャスト用エポキシなので、型の細かいところまでいきわたらせる必要があるため、粘性がかなり低く、それゆえに、カーボンに対するノリが悪いってかんじでしょうか。んが、スレッドがあったときはどうなるんでしょう?

そして、夜通しドライモーターで乾燥させ、6時間後にチェックしてみると、まだフニャっとします。乾燥の遅さも相当のモンです。しかし、乾燥時間が長ければ長いほど、樹脂ってやつは硬く強くなるので、3日後の完全乾燥に期待大です。

そして、40時間後、見てみると、完全に硬化しています。

肝心の強度はというと、完璧!フレックスコートのハイビルド並みです!ツメで引っかいても全く傷は付かず!

そして、見てくださいこの気泡の少なさ!普通、ミキシングカップで攪拌すると、気泡が中に残ったまま硬化します。フレックスコートとか、ジャストエースとかは、モロに細かい気泡が無数に存在します。東邦は気泡は少ないが、強度が弱い。ところが、このクリスタルレジンに関して言うと、東邦NT以上に気泡が少ない。いかに粘性が低いかが分かります。

クリスタルレジンテスト第二段
続いて、ラッピングの練習がてらに、巻いたスレッドを使って、クリスタルレジンの1回塗りガイドフット部の様子をチェックしてみることにしました。

ちなみに、こいつは、一回のコーティングでエポキシをケチるため、2.6g+0.9g配合でやっています。ただ、量を少なくすると硬化不良の可能性が高くなるので、要チェックです。一応、0.2gほど余裕を見ていますが、どうなるか?このテストも兼ねます。

で、肝心のコーティングインプレですが、エポキシの粘性が低いので、あっという間にスレッドの隙間に充填し、何度も執拗にフット部の隙間に筆を通す必要がありません。また、粘性が低いので今回、エア抜きをしませんでした。抜けるかと思いましたが、やはり抜け残りがありますね。粘性が低いエポキシといえど、やはりエア抜きはやったほうがいいように思いました。

そして、今回、1箇所、ライターでエア抜きしてみました。

すると、なんと、炭化してしまいました。これはおそらく、ライターのガス(ブタンガス?)が不完全燃焼を起こしてススが発生しているからだと思われます。アルコールランプのアルコールはメタノールで、これが不完全燃焼が起こりにくいので、ススが発生しないんでしょうか。やはり、エア抜きはアルコールランプでやったほうが無難です。だけど、ジッポーだったらアルコールなので、ジッポーだと、きれいにエア抜きできそうな気がしますが、ジッポーは長時間使うと、回すところでやけどするので、やはりアルコールランプのほうが無難です。

で、2日後。

硬化不良キター!※音前回で聞いてください。キュキュいわないでしょう。

ツヤも甘い。

ミキシングカップ内も同様。電灯の反射が甘いでしょう。鏡のようにならないと、硬化不良と思っていいです。

だめだ・・・。2.6g+0.9配合では、量が少なすぎて、効果不良のリスクが出る。攪拌の難易度も上がるし、クリスタルレジンは5g+1.8gでやったほうがいいですね。

それと、前にも書きましたが、粘性が低ければコーティングがしやすいかというと、そうでもないと思うこともチラホラ。粘性が低いと、確かにスレッドの隙間には浸透し易いですが、一方で、薄すぎて、タレながらコーティングになってしまい、コーティングがでこぼこになってしまいます。そして、粘性が薄いと一箇所で食いつくのが出来にくいので、どうしても弾く部分が出てしまい、特に長距離コーティングだと、エクボの連発、というか、弾きまくって、随所でコーティングの厚みが違う現象が起きます。

これを防ごうとすると、盛夫でコーティングしないといけませんが、盛ると今度はたれ始めます。だから、適度な粘性も必要ななぁと思いました。また、盛夫コーティングは、攪拌後に30分くらいほっといて、粘性が上がってからコーティングせんといかんですが、クリスタルレジンの場合、粘性が上がるまでの時間がとんでもなくかかるので、盛夫コーティングには不向き。盛夫は、30分で粘性が上がって、その作業時間が長い、ライトフォーミラが適しているかと思います。

また、硬化剤が透明だから樹脂全体が混ざったかどうかが分かりにくいっつーのも問題です。結局、硬化剤が黄色いエポキシってのも一長一短ですね。

んが、しかし、一発目の、スレッドに染みこませるためのエポキシコーティングだったら、このクリスタルレジンにかなうエポキシはないでしょうね。

ヘタに粘性が高いエポキシで、ガイドのフット根元のコーティングをやると、一見、ちゃんとコーティングされているようデモ、時間が経つと、実はフット根元に隙間が合って、エア抜きと同時にその気泡が上がってきて、だけどエポキシの粘性が高いためその場で固定されたまま硬化してしまい、目も当てられなくなるという自体に陥ります。

ライトフォーミラとの比較
クリスタルレジンを普通に薄塗りしたぶん。

同じくクリスタルレジンで、かなり厚めに、塗って、垂れない程度に樹脂をこそぎ落としたぶん。

ライトフォーミラ薄塗り。

ライトフォーミラ厚塗り。

スレッドに染みさせるコーティングは、クリスタルレジンに分があります。一方、均一な、ノペッとしたコーティングは苦手。

ノペッとしたコーティングはライトフォーミラに分があります。

ゆえに、つまり、

現時点で私の思うベストコーティングは、

一発目のスレッド染みさせコーティング及び、バットの長距離スレッドコーティングはクリスタルレジンU。

2度塗り、3度塗りは、ライトフォーミラ。

ネーム部分は弾きやすいのでライトフォーミラ。


これです。

次のタコロッドは、このコーティング方法でやってみます。

要注意事項!というかトラブル発生!
さぁてと、コーティングしよかいの。と思って、レジン投入。そして、硬化剤投入。

あれ、硬化剤のフタがアホほど硬いど・・・

ん?

フタを開けようとしたら、粉がフタからこぼれてきて・・・・

開けたら、口の部分は粉だらけ。

フタにもしっかりと粉が付いており、

硬化剤の中に異物混入orz

これは、ウレタン塗料のイソシアネートみたいやね。一度開封したら空気と反応しやすいのか、結晶化してますね。ビルディング用エポキシだったらこんなことはないんですが、キャスト用エポキシ独自の特徴があるのか。キャスト用だったら、ビルディングみたいに、少しずつ使い続けるということはありえないので、一気に全部使いますよね。ということは、開封後の経年劣化がはげしいのかも・・・

んで、

これは、クリスタルレジンでやった一発目のコーティングなんですが、薄すぎ。初めは薄ければいいのかと思ったけども・・・

考えてみれば、エポキシコーティングってのは、一発目のコーティングで抜き糸の処理をやりますよね。これが薄いとやりにくいわけであります。つまり、結局、シャバシャバだったらええんか?とういうとそういうわけでもなく、

やっぱモチは餅屋!ロッドビルディングにはロッドビルディング用エポキシです!


やっぱりライトフォーミラが一番いいと思いました。


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