塗装概論2010



自家塗装を始めて、大方半年が経ちました。勉強して練習して経験して、色々なことが分かってきたので、それをまとめてみました。ただ、今後もやっていくうちに考えや知識が変わっていくこともあるだろうと思うので、その時は新たな塗装概論2011とかの形でまとめなおします。

では始まり。

釣竿の塗装は、需要が少なく、これに流用している塗料は板金塗装の塗料ということが分かっています。

実使用に耐えうる塗料は強くて剥がれにくい、性能の良い強い塗料を使う必要があり、これに耐えうるのが2液ウレタンオンリーというわけです。

1液塗料は、ニトロセルロース、アルキッド、アクリル、1液ウレタン、1液シリコン、1液フッ素がありますが、これらは、基本的には外壁用塗料です。全く動かない不動産に使う塗料ですから、ヤブコギしたり、雨風を受けながら振りまくったり、枝とかに当たったりするわけではないし、ツメで引っかくこともないですし。だから、実使用で使う塗料よりは性能は悪くても大丈夫です。で、これらすべては、所詮1液塗料ですから、ペリペリ剥がれますし、ツメで引っかくと必ず傷が行きます。

1液塗料の中では、カシューが一番強いような気もしますが、カシューは基本的には、人口漆で、木工とか、竹のツヤ出しに使われる塗料であって、カーボン樹脂なんかに塗るのはどうなん?って思います。顔料付のカシューを使っては見ましたが、結局、カシューは透きです。透き以外は使うに値しないと感じます。

さらに、カシューは、指触乾燥時間がハンパじゃないくらい長く(3日とかザラです)、効率が悪い上に、少しでも厚く塗ってしまった場合、外側の皮膜が完全に固まってしまい、内部の皮膜が固まらない現象が起きます。扱いが難しい上に、効率は悪く、最終的な塗膜も、2液ウレタン以下。これだったら、2液ウレタンを使ったほうが無難ということになります。

2液ウレタンも完全硬化にかかる時間は、3日間くらいは必要ですが、指触乾燥時間はわずか10分で済みます。そのため、カシューに比べると、ゴミが付くリスクも軽減できますし、10分経てば、立てかけて乾燥出来ます。

で、カンペやアサヒペンのカスタマーサービスに聞いてみても、1液塗料で2液に勝てるんだったら、今現在2液塗料はありません。1液では絶対に勝てない性能を2液は持っているんだということです。

鉄パイプを樹脂とすると、1液は鉄パイプの山積み状態。2液はパイプとパイプを溶接しているジャングルジム状態。硬さ・食いつき・対溶剤・耐熱・どれをとっても2液が勝っているわけです。

2液塗料といえば、エポキシ塗料(2液タイプ。1液エポキシは外壁用サビ止め塗料で、弱い)というのもあるっちゃありますが、ウレタンに比べればマイナーです。ロッドビルディングでいうと、ウレタンよりもエポキシのほうが丈夫で耐久性があると感じていますが、指触乾燥時間が全然違います。エポキシは12時間くらいですが、ウレタンは、10分ですむので、エポキシに比べるとたれにくいというメリットがあります。

そのため、耐久性があって塗りやすい塗料は2液ウレタンということになります。ゆえに、板金塗装では2液ウレタンが主流なのです。板金塗装で主流になっているということは、色がたくさんあるというメリットもあります。塗料屋に行ってみると、山のようにある色見本を見ながら、コレちょうだいということができます。色の自由度が高いんですよね。

ということは、やはり、ブランク塗装には2液ウレタンが良いということになります。

とはいえ、2液ウレタンでも、色々なメーカーから出ています。

その中で何のメーカーの塗料が良いかですが、それはずばり言って、ロックペイントの塗料です。車用の塗料を発売しているメーカーの代表格は、カンペ、ニッペ、DNP、ロック、イサムくらいですが、ロックペイントが、少量の缶も発売していて、(最小200g)個人向けで買うならロックです。カンペ、ニッペ、DNPは15kg缶とか、一斗缶(18L)とかの大容量で、板金業者でないと手が出ません。

あと容器ですが、スチール缶はNGです。残りどれくらいか分からない上に、フタをあける時に、ヘリにこびりついて、こいつが固まり、なかなかフタが開かなくなる上に、2液だったら、配合が必要ですが、スチール缶はフタが大きすぎて配合がしにくいです。絶対細口の半透明瓶にするべきです。ちなみに、私の塗料購入口の酒井塗料(ロック取扱店)では、耐溶剤ポリに詰め替えも可能で、いつもそれでやってもらっていますが、3ヶ月位したら侵されて凹みました。PPかな?PFAは凹みません。

で、2液ウレタンといえば、2液混合ですが、配合が一番楽なのは10:1です。メス付きの塗料カップに入れて、あとはスポイトで硬化剤を入れるだけですから、むっちゃ楽です。

2:1ウレタンは、目盛りを見ながらいれないと、ちょっと入れすぎたりすると硬化不良くらいます。エポキシよりはシビアではないけど。さらにナガシマウレタンは少なすぎ。たったの60mlで何回塗れるか。失敗したり、重ね塗りを何度もすることもあるので、入り目が少ないことは弱点です。また、入り目が少ないというのは、値段が高いということにもつながります。

配合でもロック塗料の10:1が一番配合が楽なので使いやすいです。そのため、やはりロックペイントはオススメ塗料です。ちなみに、ロック塗料は重量配合と書かれていますが、容量配合でも硬化不良になりません(10g:1gを10ml:1mlにしても大丈夫)。2液ウレタンは、2液エポキシとかに比べて、硬化不良にならないレンジが広く、少々配合がずれたって、生乾き現象は置きません。そのため、重量配合でも容量配合でもトラブルは起こらないです。重量配合でやると、塗装ブースにハカリが必要になり、トルエン・キシレン等のヤバイ溶剤を使っているウレタン系の自家塗装と場所としては、だいたいが屋外使用が前提ですから、屋外にハカリを出さなければならず、そうすると風の影響でなかなか値が安定しないのと、10g:1gとかだったら、10gと10.9gの違いが分からないので、むしろ重量配合のほうが配合ミスにつながる可能性が高く、よって、目盛りで一発であわせられる容量配合をしたほうがいいと思います。

ただし、2液ウレタンにも弱点があって、それはベースコート(色付けの塗装)を2液ウレタンで塗ることです。ベースコートの場合、タレた時の修正が大変です。そして、固まるとなまじっか強力な塗料なため、これもタレたれた後の修正がめんどくさいです。ペーパーがけしたら、他の、タレていないところの下地が見えるところまで削れてしまい、塗装やり直し。薄く何度も塗る方法が無難といわれていますが、2液ウレタンの場合、薄く重ね塗りをしていると、ブリスタ(表面のざらつき)が起き、この修正が不可能です。

そのため、タレにくい塗料で薄く重ね塗りを一気に行うベースコート塗装が理想的です。こういう用途では、ラッカー(早く乾くという意味。ジエチルエーテル系の溶剤スプレー塗料缶)が一番適しているんですが、ラッカーだと、だいたいがアクリルもしくは、アルキッド塗料です。アクリル塗料は熱に弱い(70℃で軟化変性)という弱点がありますので、炎天下の車の中に置きっぱなしにすることもある釣り竿用塗料としては失格だと感じます(詳しくは、失敗談を参照)。

また、塗料の世界では相性というものが存在し、例えばベースコートがアクリル、トップコートに2液ウレタンとかを使った場合、アクリルとウレタンの相性が悪く、層面剥離が起こる可能性も出てきます。一方、プライマーを塗るという手もありますが、2液ウレタンのプライマーは、2液である場合が多く、めんどくさい。1液プライマーはラッカータイプがあることはありますが、だいたいがアクリルです。

すると熱に対する弱点が出てきますので、プライマーは塗らないほうがいいです。2液のプライマーを塗るくらいなら、2液ウレタン使ったほうが作業性がいいので、プライマーは塗らないほうがいいと思います。つまり、ベースコートに使える塗料はというと、タレ対策のため、効率よく薄く何度も塗ることが出来る速乾性を持ち、2液ウレタンと相性の良い塗料が適しているということです。
これにピッタリなのが、これまたロックペイントの

プロタッチ

と呼ばれる塗料です。これは、板金塗装で効率よく補修をするための塗料で、成分は1液変性ポリエステル塗料と呼ばれるものです。恐ろしく速乾性で、薄く塗った場合、指触乾燥はたったの3分でOK。厚く塗ったところで、10分でOK。吹いていくそばから固まっていくような感じなので、厚く塗ってもタレにくい。そして、ウレタンとの相性がいいので、ベースコートとして重宝される塗料です。1液のため、配合の手間は、薄め調整のみ。2液と違って、可使時間の制限がないので、歩留りも良い。また、私はやったことないですが、素人でもパール・グラデーション塗装がしやすいように開発されたので、素人でもプロのタッチを実現できるとのことで、プロタッチと名づけられているみたいです。実際、ソリッド塗装をしてみましたが、ホントにタレにくく、使いやすいです。素人の自家塗装なら、是非ともオススメの塗料です。ただし、1液である以上、耐久性・耐溶剤性なんかは、よくないので、 トップコートに2液ウレタンを塗ることが前提です。ということは、2液ウレタンとの相性もよく、理想的なベースコートということになります。ベースコートとトップコートでどちらが難しいかというと、圧倒的にベースコートです。トップコートのクリアなんてもんは、少々厚塗りしたって、分からず、下地の隠蔽性を配慮する必要も無く、少々たれたって、厚塗りしてペーパーがけ+コンパウンドである程度ごまかせます。

つまり、トップコートはベースコートほどの技術は要らないということです。だから、難しいベースコートを難易度の低いプロタッチで行うことはかなりのメリットです。さらに、このプロタッチ、フェンダーとかのプラスチックパーツのベースコート塗料として使うことも考えて作られているため、塗膜に柔軟性があります。ということは、曲がることが前提の釣竿の塗装ですから、柔軟性に富んだベースコートを使うことは、ブランクの特性を引き出す意味合いも追加されます。

一方で、従来のブランク塗装では、ベースコートも2液ウレタン。トップコートも2液ウレタンという組み合わせなので、ブランク→硬いベースコート→硬いトップコートとなっていました。

プロタッチを使うことによって、ブランク→柔らかいベースコート→硬いトップコートで塗装することにつながり、結果、塗膜の柔軟性が上がります。そのため、ロッドの曲がりを阻害しにくい理想的な塗料チョイスということも出来ます。

長くなりましたが、こういうわけで、私の思う、釣竿塗装論は

ベースコート・・・1液変性ポリエステル塗料。(プロタッチ)
トップコート・・・10:1タイプ2液ウレタンクリア。(パナロック)


塗装に必要な時間。
足付け。ペーパーもしくは、ポリエステルクロス。ブランク塗装を剥がすものは、160番→1000番。裸のブランクは、600番→1000番。共に水研ぎ。

ベースコート。3,4度塗りで、大方30分もあれば余裕。
トップコート。1度塗りで一気に分厚く塗って、1週間乾燥。メーカーの説明書には3日間で完全効果と書かれていますが、それは薄く塗ったときの話。素人が分厚く塗った場合、1週間くらいはみといたほうがいいです。

塗り方について
バイクのアッパーカウルの塗装を通じて、塗装のコツが段々つかめてきました。素人の自家塗装で大事なのは、技術ではなく、失敗しにくいように作業をするということです。毎日塗っている職人じゃあるまいし、タレない技術を身につけろっていうのがそもそも無理!そのため、素人の自家塗装は、「失敗が少なくなるように、合理的な塗装計画を入念に考える」こと。これが一番大事です。例えば、カウルを縦に置いた場合、ライト面は地面に対して平行ですが、ウィンカーの部分は地面について垂直です。そのため、塗装を開始し、塗膜がカウルに積もってくると、重力によりタレやすい部分とタレにくい部分が出てきます。前述の例では、ライト部分はタレにくく、ウィンカー部分がたれやすいです。そのため、どうやって塗ろうかと考える時に、まず、地面に対して平行な部分を塗り、そして、ライト部分が完全に乾いた後、ウィンカー部分を地面に対して平行になるように動かし、塗っていこうと計画を立てるべきです。そうすることによって、タレのリスクは激減し、修正の手間も軽くなり、出来栄えもよくなる。というわけです。すると、てっぺんとサイドの塗膜に段が出来ます。しかし、その段はペーパーで平坦に修正してやれば問題無しです。

塗りにくい部分から薄塗りしていき、塗りにくい部分がなくなったところで一気に塗ったるというのも合理的な計画です。そのため、塗るときには、事前に、塗装手順というものを作り、可能な限りタレ防止のために合理的に推敲していく工夫が必要です。まぁ、ブランク塗装では筒なので、塗りにくいところと塗りやすいところの区別がないのでどうでもいいですがw

とりあえず、こんな感じです。

塗装手順書
ベースコート
薄くサンディング→パテでクラック修正→入念にサンディング→プロタッチでベース塗装開始(ミスト幅は搾って距離を置き、薄く塗りを繰り返し)→エアダクト→ライト周辺→ウィンカー→スクリーン→カウル全体のエッジ→これを繰り返す→完了→10分休憩→ミスト幅を広げて、残った部分を一気に塗る→完了→1日乾燥

トップコート
100ml×2ほどクリアを配合。塗料カップに50mlずつ入れて、薄め液で希釈し、ミスト幅を絞って吹きつけ。プロタッチに比べ乾燥が遅いので、なるべく弱い風圧で→エアダクト→ライト周辺→ウィンカー→スクリーン→カウル全体のエッジ→これを繰り返す→ただし、乾燥が遅いので、作業がひと段落すると、 10分ほど一服し、休憩を多用する→塗りにくいところ終了→地面に対して平行になっている部分から塗装していく→ライト周辺→完全乾燥→カウルを動かし、右サイドを地面に平行に固定する(引っ掛けておくだけでは落ちるのでマスキングテープで固定しておく)→右サイドを一気に塗る→完全乾燥→左サイドを一気に塗る→乾燥すると引けが起こるので状況に応じて2度塗り3度塗りなど、臨機応変に対応する→3日乾燥

研磨作業
耐水600番ペーパーで凹凸処理。タレ跡処理→800番→1000番→1500番と水研ぎしていき、ピカールでピカピカに磨く。ただし、くさいので、換気のよいところでやる。間違っても、超ミクロンコンパウンドは作業が恐ろしく時間がかかるので使わない。なるべく粗めのコンパウンドでやるべし。素人には違いが分かりません。

釣竿の場合も、タレを防止する工夫をする必要があり、可能であれば、ドライモーターで回転させながら塗装する。もし難しければ、同じイスを2つ用意し、引っ掛けの支えを置き、ブランク両端を乗せて地面と平行になっている部分から吹き付けていく。完全に乾いたら、まだ塗れていないところを上にし、地面と平行にした後吹き付けていく。これを繰り返し、塗装を完了させる。ただし、回っていると、塗り忘れたところがわかりにくいし、塗りたいところが回転するので塗りにくい。

今のところ、こんな感じです。


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