UV樹脂の可能性


塗料の勉強をしているときに、テンリュウがUV塗料を使ってロッドの塗装をしているというのを知り、調べていました。UV塗料というのはUV樹脂+顔料の塗料です。普通樹脂が固まるのは化学反応で塗膜を形成するか、乾燥凝固で塗膜を形成するかの2種類です。化学反応型は2液混合なので、塗膜の性能は良いのですが、混合の手間と硬化不良のリスクがあります。乾燥凝固は1液塗料なので混合の手間や硬化不良のリスクはないですが、所詮バラバラの樹脂が積層して塗膜を形成するタイプなので、塗膜の性能が悪い。というわけで、一長一短の世界なのですが、このUV塗料というのは1液塗料ですが、2液並みの塗膜性能を誇るもので、しかも乾燥時間が、ものの1分もあれば完全硬化してしまうという優れもの。そのメカニズムは、紫外線が重合開始剤の役割をしており、紫外線を浴びたレジンが活性化し、ラジカル状態になったモノマーが重合してポリマーを形成するというもので、1液でも網目状の3次元結合を形成してくれるので2液並みの性能を誇るというわけです。

私が予想するに、メーカーが使っているのはこの、UV樹脂じゃないかとにらんでいます。
考えてみれば、数をこなさなければならないメーカーがミキシングカップでコネコネと液を混ぜて30分くらいで固まり始めて、余った樹脂を捨てて、次のミキシングカップに樹脂を入れて、コーティングして、アルコールランプでエア抜きして、そんで、3日乾燥させて、そこから硬化不良が起きていないかチェックして、ペーパーで足付けして、上の作業を3回くらい繰り返して一本の竿を作り上げて・・・・

ってなめんどくさいことをするわけがない!

(ただし、セントクロイはフレックスコートライトフォーミラを使ってこの作業をしてロッドを作っています。高速で回るドライモーターに一気に樹脂を付けて、大型の乾燥ドラム缶に放り込んでドラム缶がガラガラと高速回転して終わり。エア抜きなぞしてないです。だからエッジははねとるわ、エアはばんばん混入しているわ、もう粗い粗い。ポパイに置いてあるので観察したらスグに分かります。)。またメガバスの工房でも同じような光景が過去のカタログ資料に載っていましたが、あれだけたくさんのロッドをカスタムロッド屋みたいなやり方でやっていたら、一体一本ナンボになるんじゃい!というわけで、疑問です。

ロッドビルディングで一番時間がかかるのがスレッドのエポキシコーティングですが、これにUV樹脂を応用できれば、これほど効率がいいことはないです。乾燥時間3日×3の手間が省けて、硬化不良のリスクもないし、1液なので歩留まりがいい。極め付きは溶剤を含まないので、下地を侵すこともないのでデカールで苦労することもない。

となれば、応用せずにはいられません。

というわけで、UV樹脂がスレッドコーティングにいけるかどうかの実験をすることにしました。

東邦産業 UVレジン

調べてみると、東邦産業からUVレジンというUV樹脂が出ているのでこいつを買ってみました。

で、太陽光10分でも硬化するみたいですが、一応念入りにやるつもりで、付属のUVライトも買ってみました。UVライトだと、30秒〜1分で完全硬化するみたいです。

レジンがグロー(夜光)で1200円で、クリアが1000円。UVライトが800円で、そんなに高いものではないです。

で、まずはレジンをチューブから出してみました。粘性が高く、これではスレッドコーティングはスレッドの間に染み込まないのでまず出来ません。熱かけて粘性を下げればスレッドの隙間にも入っていきそうですが、まだ硬さを見てないので使えるか使えないか判断してからのチャレンジにします。

で、これを爪楊枝にとってブランクに塗ってみます。薄塗りと厚塗り。

で、UVライト照射。で、このUVライト照射ですが、かなりの強さ&まぶしさで、凝視すると目が病気になりそうなので偏光レンズをかけて紫外線をカットして作業したほうがいいです。

で、困ったことに、UV照射。ライトが小さすぎて当たっているところと当たっていないところがイマイチわかりません。そのため、どの時点で硬化終了かの判断が難しいです。

スレッドコーティングの場合、硬化終了していなかったら樹脂が崩れてアウトなので、硬化終了かどうかの判断は重要です。

まぁ、一応3分くらい照射し続けたんで大丈夫かと思い、触ってみると、

硬さはかなり硬いですが、表面はべとつくという生乾きの状態。

つめで引っかいても、容易に傷がつきます。

厚い樹脂は樹脂の底のほうが生乾きで簡単にひっぺがれて、内部を見てみると樹脂が硬化していません。

薄いほうはベトついて、簡単に傷がつきます。

コレはまさしく・・・

硬化不良。

とりあえず、別のUV樹脂のユニソーラの説明書を見てみると、10分以上照射しても表面のぬめりが取れないときは、アルコールで拭きまいと書いてあるので、

拭いてみました。あと、UVは深いところには届きにくいということなんで、厚盛りは厳禁みたいです。ということは顔料も邪魔になるため、カッチリ硬化がしたい方は間違いなくクリアのほうがいいでしょうね。

紫外線照射が足りなかったのか、それとも、もともとこのレベルの樹脂なのか・・・。

もしかしたら、グローだとクリアではないので、顔料が紫外線照射の邪魔をしているのかもしれません。

説明書を見る限り、FRP、PE、PPの補修用の接着剤として売られているみたいで、スレッドとかの強度保持としてはあまり向いてないのかな?

だけど、まだ硬化不良かもしれないので、太陽光で様子を見てみようというわけで、一日ほど窓際で紫外線を浴びさせました。

それでも状況変わらず。

やはり硬化不良状態になります。

と、ここで成分を見てみると、

オリゴエステルアクリレートです。

オリゴエステルアクリレートというのを調べてみても、FRPの樹脂として使うということくらいしか書かれておらず、あんまし資料もないのでよく分かりません。

東邦UVレジン クリアー
上の蛍光塗料は顔料が入っている分、性能は悪いはず。だったら、クリアならどんなん?と思って挑戦。

新しく考え付いたラッピング方法。網タイツラップを施し、これにUVレジンでコーティングをやります。

ミキシングカップに出して粘性をチェックしてみました。明らかにグローよりもクリアのほうが粘性が低いです。どうせスレッドコーティングは、クリアでないとだめなので、クリアのほうがいいです。

ミキシングカップに出した粘性がコレ。LF以上、ジャストエース未満といったところでしょうか。コーティングをするには、なんとかいけそうな粘性です。

そして、コーティング。ドライモータにセットして、コーティング。エア抜きして、

そして、回しながら、1分くらいUV照射。

そして半日くらい虫干し。

完全硬化。悪くない出来栄え!エアはちゃんと抜けてますwwwだけど、やはり、ホームセンターに置いてある汎用の2液エポキシ接着剤くらいの表面強度で、ちょっとくっつくというか、ツルツルの仕上がりになるビルディング用エポキシとは違います。

そして、致命的なのが、ステンと相性が悪いのか、くっついていません。これでは完全にビルディング用に使うのは失格です。





ユニソーラ
一方、新たに注目しているユニソーラというUV樹脂もあって、これを見てみると、成分が紫外線硬化エポキシアクリレート樹脂とのことです。このエポキシアクリレートを調べてみると、なんとビスフェノールA型です。エポキシはビスA型とフタル酸型とあるみたいなんですが、ビスフェノール型というのはいわゆるロッドラッピング用に使われるエポキシレジンと同じものです。ということは、いけるんじゃない?とはいえ、よーに調べたら、厳密に言うと、UVエポキシと2液エポキシは若干分子構造が違うそうな。

というわけで、実験。

まずはユニソーラを出してみました。液体というよりは、むしろ歯磨き粉くらいの粘度です。これではラッピングには使えません。

で、3300円もした樹脂はこれにて終了というわけですが、とりあえずどんなもんか、見てみます。

まず、がいにクサイです。このにおいは、FRPで使うポリエステル系のニオイです。溶剤が多分一緒。UV樹脂は無溶剤ではなかったのか!?これは、家族のいる人間だと、室内作業は出来ません。ガスマスク着用です。

そして、適当なカーボンパイプにつけて、専用のUVライトがないので、東邦のUVライトでやったりました。

前回まぶしかったのでUVカットで偏光レンズ着用。これだとまぶしくありません。っというか、この状況で家の中で作業すること自体大間違いです(汗)

そして、UV樹脂の問題点再び。一体どれだけ照射したら固まっているのかの目安がつかないという点です。触ったら生乾き。さらにUV照射。なんてことを10分くらい繰り返して硬化。まぁまぁの硬さです。

で、まだ部屋の中がくさいので、まずは瓶をアルミホイルで包む。これでUVカットがより強力となりました。

で、完全には硬化していないのか、カーボンパイプに塗ったUV樹脂がまだ臭かったので、外で放置。これで、紫外線を当てて完全硬化を狙います。

で、一日経って、完全硬化。すると、白濁しました。白濁する時点で、スレッドのラッピングは絶対無理です。

すると、今度はベタ付が!?

まぁ、説明書には、ベタ付が残ると、アルコールで拭き取ると、硬い仕上がりになります。とのことなので、

メタノールで拭き取り。

すると、

やっぱりべたつきは取れず。1液だから硬化不良はありえません。だもんで、

ユニソーラはボツ!というわけで。

続いていきます。

んが、便利な面も一つ。

バケツに穴が開いていたので、これで修理してみようと思い、ユニソーラを出し、爪楊枝でなじませると、わずか10分で完全硬化wしっかりと修理が出来ましたw固さ的には2液エポキシ5分タイプくらい。1液だから楽だし、この塗膜は1液塗膜ではないです!スレッドには無理だけど、FRP補修だったら重宝するでしょうねw

ネイル用ジェルネイルキット
あれは土曜日のザ・フィッシングでのこと。最近のダイワは、素人集のオナゴシたちがワイワイガヤガヤと釣りするところを放映しているんですが、そのギャルが、釣りするときはジェルネイルが丈夫で良いと説明していて、紫外線で硬化するので、簡単だし、なかなか剥がれないしといっていたんですが、それ、UV樹脂じゃろ!?ってなわけで、そーいや嫁さん、ジェルネイルキットもっとったわ。というわけで、嫁さんのジェルネイルキットを物色し、実験を試みました。天満屋のロフトに売っています。たしか1マソ。

これがUV樹脂のクリア。成分はウレタンアクリレートですね。ウレタン系の樹脂かしら。

粘性は・・・・スレッドの隙間に染みこむギリギリの粘度かな。フレックスコートのライトフォーミラが攪拌後30分くらいの粘度です。匂いはゼロ。無用剤タイプです。

早速カーボンパイプに樹脂を乗せて、

付属のUV照射機で照射。説明書によると、3分照射が目安だそうです。

で、触ってみるとかなりべたつくので、

説明書を見てみると、やはり、照射後はべたつきが残るのがキホンらしいです。

ワイプソルーションなるもので拭き取りまいと書かれていたので、

ふき取ってみました。すると、エポキシのような硬さ!ただし、透明度がイマイチ。

で、さらに

薄く塗ってやってみもみました。これもやはり、エポキシ並みの硬さ。ただし透明度がダメ。

透明度をもっとテストしようというわけで、

スレッド巻いて、フデで、UV樹脂をコーティングしてみました。しかし、粘性が高いので表面はフデの跡が付いてボコボコ。

んで、ライターで炙ったら、若干マシになったかな?微妙ですが。

これをUV照射機にかける。

で、ベタつきを取ってチェック。ツメで簡単に傷が付きます。前回に比べて硬さがイマイチ。スレッドがあわないのかな?で、照射にバラツキがあるのか、手前はコンモリしているのですが、上側が薄すぎます。そして、透明度ダメ。エポキシのような輝きもなし。あまりよくないです。

そして裏側はベタつきを取ると、樹脂まで取れました。

そもそもが、これはネイル用なので、ライトは上しか付いていません。だもんで、回転させないと、上側のみが固まり、下側は永遠に固まらないというわけなんでしょうね。

全体的な評価としては、いけそうな気がしますが、エポのほうがよっぽどいいです。まず粘性が高いので、フデで塗りにくい。スレッドの上にコーティングしにくい。そして、最終硬度がイマイチ。透明度もダメ。

他の素材を使って実験してみます。



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