スプールベアリンググランプリ


「ベアリング交換すると、飛距離が伸びる!」これが釣り人の心を掴み、飛ばすためにあれやこれや考え、どのベアリングがいいのか、選定をする。これが悩みの種で、リールカスタムメーカーが色々なベアリングを出しているもんだから、色々使ってしまい、何がいいのか分からなくなり、だけど、飛距離にはこだわりたいから、新発売のベアリングが出ると、ついつい買ってしまう。高いベアリングを・・・。

結局、回転に直結するベアリングはスプールベアリングなんで、これにこだわることは、試行錯誤を重ねる釣り人にとって、楽しみでもあり、釣果にもつながることなんで、すごくいいことだとは思うんですが、

こうして、改造好きな釣り人はドロ沼へとはまってしまい、

結局、どれがいいんな!?

と問いかけても、ハッキリとした答えが返ってこない。

ある人は、そりゃーSICBBでしょう!だって、ボールが軽いし、セラミックなもんだから熱膨張しないので、高回転で抵抗が落ちることがないし!

ある人は、そりゃーオープンベアリングでしょう!だって、シールドがないから、フリクションロスが軽くなるじゃないの!

ある人は、ノンノン!分かってないねぇw実はシールド付きがいいのさwオイル保持能力ってモンがありんす!

もうね・・・

ハッキリ言って、各個人、インプレがバラバラです。

ただ、すべてにおいて感じることは、使っている人の感性にすごく左右されるってことです。

実釣で、

あっ、ベアリング変えたら、こんなに飛距離があがったような気がする!

前使っていたベアリングよりも飛んでいるような気がする!

「OOOOな、気がする。」

結局、コレなんですよね。定量的ではなく、定性的なインプレになってしまい、実際、どれがいいんな?というのが全く分かりません。キャストも毎回毎回違うから、カッチリした違いが分かりにくい。というか、全くの同条件で投げれないから、比較のしようがない。

それでもって、ベアリング交換する時って、新品のエアリングに変更するでしょ?ということは、古いベアリングから新しいベアリングにしているので、それだけで飛距離は上がるはずなんですよ。確かにベアリングを変えて飛距離があがった!しかし、それは、高いベアリングにコンバートした効果か、ベアリングを新品にした効果か、どっちかわからんとです。

ホントのホントの対照実験が出来れば、良いんですがね・・・。

例えば
新品のべアリングを何種類か持ってきて、リールにセット。

そして、室内の地上30mくらいのところ(風の影響を消すため)から、クラッチを切って、ラインに付けたオモリを落下させる。

そして、地面に落下するまでの時間を測定。

落下する時間が早いベアリングほど優秀。

これが出来るのは、香川で言うと、イオン高松でしょうね。吹き抜けの4階から、1階に向けて落下させればテストが出来ます。

交渉・・・・

無理無理。

だもんで、実際、カッチリした比較テストは個人でやるには無理があります。

そこで参考程度ですが、最近ちょこちょことベアリングの比較で使っている、ハンドル思いっきり回して、クラッチを切り、レベルワインドが何往復するかで、ベアリングの比較テストをしてみようと思い、やることにしました。

テスト条件

リール・・・6601C4
ハンドル・・・リブレプロトハンドル。
ドラグ・・・・バカボンド24金D−4ドラグ
フレーム・・・レコード用真鍮フレーム。
サムレスト・・・6501CHW用サムレスト。
スプールシャフト・・・6501用ロケットモデル。
スプール・・・・・・・・6501用ロケットモデル。
ライン・・・・・・・・・アバニGT8号100m巻き。
コグホイール・・・Btrap製ARBコンバート。
レベルワインド・・・Btrap製BBクロスギア。
ラインキャリエッジ・・・・6001C用純正
メインギアグリス・・・フジヤマゼロ
オイル・・・・・・・・IOS01
ブレーキブロック・・・ゼロ
その他は純正。

これに、色々なスプールベアリングを付けて、レベルワインドが何往復するかを見ます。ただし、数えやすいように、右左右左と移動した場合、4往復とカウントしています。ので厳密にいうと、2往復ですが、4往復とします。

また、本来なら、全部新品で比較したほうが良いんですが、そんな資金があるはずもなく、持ち合わせのサンプルで実験をしています。

では始まり。


新品S−ARB シールドあり


7往復。



新品S−ARB オープンした後脱脂せず


9往復



新品S−ARB オープン後、完全脱脂


21往復。全然違います(汗)



ライラクス のセラミック(SIC)ベアリング(新品使用から3ヶ月経過)




13往復。



ZPIさん SICBB 旧型(2年使用)


17往復。8往復目で急激にスピードダウンしています。これが使い込んだダメージか。やっぱり、ベアリングは消耗品。使って行くと、どうしても急減速するポイントが出てくるんでしょうね。


ラジコン用LRPさんセラミック(多分ジルコニア)ベアリング。釣行1回だけ使用。


7往復。

最悪の原因は精度の甘さにあると思います。微妙にセンターがズレているの、分かりますか?右のベアリングが右上にセンターがズレています。おそらく、これがブレを誘発して、回転が急激に落ちているものと思われます。


アブさん純正(5,6キャストのみ使用)


エ!?25往復!?す、すごい!今までのとケタが違うくらいの滑らかさ!上のベアリングみたいに、急に失速するポイントがない。滑らかなまま、最後の最後まで回っている!しかもシールドベアリングで・・・・。これって、リプレイスする必要ないんじゃ???

Availさん アルミハウジングベアリング(2ヶ月使用)
新潟のリールカスタムパーツショップ、アベイルさんのアルミハウジングBB。普通、10−4−4ですが、7−4−2.5のベアリングにアルミカラーをハウジング加工して、10−4−4に無理やりサイズアップしたものです。こうすることで、ボール径が小さくなり、摩擦が小さくなるので、もっと飛ぶようになる。というフレコミです。

取り付けに向きがあり、ベアリングがあるほうが内側に向くようにセットしなければいけません。

25往復!2回目が21往復。アブのベアリングと同様、回転に急失速が全くありません。おまけに2ヶ月使っているのにwwwやはり、ボールは径が小さいほうが回転が良いみたいです!


ミネベアさん(NMB)(IOSファクトリーが使用)新品
IOSにオーバーホールを依頼すると、購入できるベアリング。ミネベア製です。日本で初めて精密なミニチュアベアリングを作ったメーカーで、ミニチュアベアリングはほとんどミネベアが作っているとどこかで聞いたことがあります。また、町工場から部品を集めてきて組み立てるOEM形式ではなく、外輪・内輪・保持器・転動体すべてを自社工場で製造しているスゴイメーカーです。

で、まずはミネベアのシールドあり。
15往復。



続いてミネベアのシールド無し。
24往復。
以上、ランキングを付けると、

こんな感じです。

順位 メーカー 名前 レベルワインド往復数 使用期間
1 Avail アルミハウジングBB 25 2ヶ月
1 アブ 純正BB 25 5,6投
2 ミネベア 汎用ステンBBシールド無し脱脂 24 新品
3 シマノ SARB完全脱脂オープン 21 新品
4 ZPI 旧SICBB 17 2年
5 ミネベア 汎用ステンBBシールドアリ 14 新品
6 ライラクス セラミックBB 13 3ヶ月
7 シマノ SARBシールドなし脱脂不完全 9 新品
8 シマノ SARBシールドあり 7 新品
8 LRP ラジコン用セラミックBBシールドアリ 7 1日


回転性能について
なんと、アブ&アベイルが一番。値段の高いARBやセラミック系ベアリングを抜いてます。この実験を通して気づいたんですが、ZPIを見ると分かりやすいんですが、回転が急に失速する瞬間があります。ライラクスもそうです。この手のベアリングで精度が云々ということはほぼ皆無に等しいので、失速の原因として考えられるのは、ずばり経年劣化です。一方、アブ、アベイル、ミネベアは高回転をキープしており、失速ポイントがありません。これらの事実から分かることは、

ベアリングは新しいものが一番回る!

というわけです。ステンベアリングでも、ものっそ回っているので、ベアリングの素材は関係ないと思います。つまり、定期的に交換するメンテが必要で、ライラクスが3ヶ月で回転にかげりが見え始めており、一方、アベイルが2ヶ月で回転が落ちないといわけなんで、

交換のタイミングは2ヶ月というところでしょうね。

定期的に交換するためには、値段が一番大事で、2個で3000円以上するものを定期的に交換できるかい!というわけで、安いベアリングが必要です。上の実験ではミネベアが一番安いです。1個260円ですから。なんせ間に何もかんでないですから、中間マージンもないんでしょうね。

ということは、ミネベアのベアリングを2ヶ月間隔で交換すること。これが究極のスプールベアリングということになります。

ただ、純粋な回転性能を見てみると、使用期間2ヶ月のアルミハウジングBBが新品のベアリングに匹敵している回転数ですから、やはり、ボールが小さいほうが摩擦が小さく、回転はいいと思われます。だから、こだわる人は、アルミハウジングBBをつけてもいいかもしれません。ARBやZPIよりはだいぶ安く、たしか500円くらいでした。しかし、アベイルではすでに完売しており、手に入りません。そのため、やはりミネベアの汎用ステンベアリングを選ぶしかないです。


ラジコン用ベアリングについて
よく、「ラジコン用が一番よ〜!」という話を聞きますが、ラジコンメーカーが独自でベアリング工場を持っているわけがなく、結局はOEMが予想されます。で、そのOEMはどこへ依頼されるかというと、JIS規格がない以上、十中八九、ミネベア等のOEMと思われます。OEMをする以上、値段はミネベアよりも高くなります。だからミネベア買ったほうがいいと思いますです。また、LRPとかいうラジコンメーカーのものは、おそらく海外の安い工場で作られているようで、精度が悪いです。結果、回転性能がボロボロ。そのため、「ラジコン用」にこだわる必要はなく、ミネベアを選びまいと思います。


シールド有り無しについて
果たしてどっちがいいのか???

回転性能について
実験結果を見る限り、シールドの有無が回転に大きな影響を与えるとは思えません。アブのシールドベアリングが一番回っているからです。

脱脂について
ただ、気をつけておきたいのは、シールドの内側には粘性の高いグリスが含まれており、これを完全に脱脂しないと、回転性能はボロボロというわけです。SARB参照。パーツクリーナーで徹底的に洗っても、シールドがついている関係で、完全に脱脂出来ているかどうか目視確認が出来ません。

一方、オープンにした場合、パーツクリーナーを吹き付けることで脱脂の目安が付きます。シールドが付いていた場合、パーツクリーナーを吹き付けても回転しないので脱脂の目安が付きません。また、メンテナンス時の古いオイルの脱脂の目安もオープンに分があります。

異物混入問題について
オープンにした場合は、当然、異物が混入しやすくなります。

一方、シールドがあった場合、異物は入りにくくなりますが、今度は洗浄時に中に入った異物が出にくいというデメリットがあります。つまり、シールドは一長一短です。また、シールドが付いているとはいえ、完全に進入を防ぐことは出来ないので、異物は混入します。写真はシールドを外した後に出てきた古オイルと異物の写真。詳しくは「ベアリングのシールド外し」を参照。また、古いオイルの除去も同様に、オープンに比べてやりにくいという欠点があります。

ゆえに、シールドありはメンテナンス時の掃除に悪影響を及ぼします。オープンタイプはメンテナンス時の掃除はやりよいですが、異物が入りやすいという悪影響があります。

ゆえに、どっちもどっちって感じです。

オイル飛散について
スプールを外して、オープンミネベアにIOS01を2滴加えて、回転させました。普通は半滴なので、かなり多めのオイルを塗布しました。そして回転させ、オイルの飛散状況を見ました。

スプールピニオンが付いている側は、オイルはほとんど飛散していません。スプールピニオンがシールドの役割をしているみたいです。

一方、遠心側は放射線状にオイルが飛散しています。シールドがないので、シールドアリよりは、明らかにオイル保持能力は低いです。

が、

オイル保持能力が悪くて何が悪いと思うこともチラホラ。

オイルが多すぎると、回転性能はガタ落ち。これはSARBやシールドありミネベアの結果を見ると一目瞭然です。

一方、オイルが少なすぎた場合、回転が悪くなるかというと、そりゃー適量が一番だろうけども、そこまで回転は落ちません。なんせ、「OHの補足」で書いたように、ライラクスのセラミックベアリングはオイル無しで使っていましたが、回転性能が悪いとは感じませんでした。

耐久性が著しく落ちるとかいっても、実感は出来ませんでしたね。なんせ、高回転をずーーと維持するようなベアリングではなく、一瞬高回転になってあとは通常回転ですから、ボールの熱膨張とかもほとんど起きないだろうし、回らなくなるほど焼きついてしまったリール用ベアリングというのを見たことがないので、せいぜい、寿命がナンボか短くなる程度のモンだと思います。

オープンにした場合、余分なオイルをはじき出してくれるため、オイル量が多すぎる場合は、勝手に排出して回転性能を適正に修正してくれます。一方、シールドアリだと、オイルが出れずに、回転に悪影響を与えます。

だいたいが、リールのメンテの時に、ホントにホントに適量を毎回入れられるでしょうか。IOSなんかでは、半滴〜1滴が適量とされていますが、目薬容器を絞る時の力で、一滴の量は変わります。

そして、シールドアリだと、完全脱脂がしにくいので、前回のオイルが微妙に残っていることだっておおいに考えられます。

ということは、シールドをつけていることで、オイルが多くなりすぎる可能性が高くなるというわけです。

オイルは、多すぎる場合と、少なすぎる場合だったら、少なすぎる場合のほうが性能がいいです。

そのため、私はシールドがないほうが良いと思います。

結論としては、スプールベアリングはオープンベアリングのほうが良いと思います。


まとめ
一番性能がいいのは、アベイルのアルミハウジングベアリング。転動体のボール径が小さく、従って摩擦が小さくなるから。ところがもう売ってない為、使用出来ない。

実験の結果で分かったのは、2ヶ月で交換するのが一番良い。コストを考えると、定期的な交換はSICBBなんかのハイエンドBBでは無理。そのため、10−4−4サイズのOEM先であるミネベアが一番良い。値段は1個260円。

シールドに関してはオープンのほうが良い。余分なオイルを出してくれるのと、メンテナンス時に、古いオイルや、もともと付いていたグリスを落とすのが便利だから。

まとめると、

ミネベアの汎用ステンベアリングをオープンにして、それを2ヶ月のOHごとに新品に交換すること。これが究極のスプールベアリングです。

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