ノンブランド ボロベアリングの品質改善


ヤフオクやら、ヤフショやら、アマゾンやらで、

「ノンブランド、ベアリング」ちゅうて検索したらやっすいベアリングがよっけ出てきますけどね、

あれ、ウチでも扱っていたのでよく知っているのですが、

仕入れ先はアリババ系の中国ECサイト。

仕入れ値1個20円くらいのクソボロです。

「ハンドルノブ専用、当店オリジナル!オイルチューニング付!」

ちゅうて、具体的な製造元の名前を出していないところなんかもそうですね。

僕もこの手のベアリングを扱っていて、かなり苦労しました。

なので、根本的な品質改善を行うことにしました。

まず、なぜにこの中国ベアリングがボロいのかという点について説明します。

まずベアリングの安売りを追及していくと確実「中国」に行きつきます。ミネベアのDDL740ZZなんかも中国工場です。

これは価格競争の結果そうなるのでしょうが、家電他、巨大輸出産業を支えている以上、中国は世界最大のベアリング製造国と言えると思います。

そのため、アリババコムなんかで、ベアリングの製造オファーかけたら、まぁ、来るわ来るわ、真夏のセミなみに、どこからかしこから、兎に角、

すさまじい数の工場、ショップからアクセスがあります。

ただ、数があれば、ピンからキリまでで、1個10円程度のボロから、100円越えの単価まで千差万別。

兎に角、日本のベアリング供給事情とはケタが違うと思ってください。

世界最大級のベアリングサプライヤーが無数に存在するわけです。

さて、その無限のサプライヤーから、買い取って販売しているのが、アリババ系のショップに店を構えるベアリングショップです。

日本でノンブランドのベアリングの安売りをしている連中はここらに集まっているショップから買い入れて、それをヤフオク等で販売しております。

で、僕もそうだったのですが、アリババ系のサプライヤーは、ノンブランドにつき、品質なんてどうでもよく、供給体制が安定していないのです。

実際入れてみないとどんなものが来るやら分かりません。

あるとき、Aの業者から仕入れたベアリングが良かった!

1か月後、同じA社から仕入れてみると、別物のベアリングが来て、内径が微妙に小さくてシャフトに入らない。

なんてことはよくあることです。

1回目は脱脂されており、回転よかったのに、2回目の仕入れでは、グリスベタベタで半分さびているようなものもあれば、

以前、20639のベアリングブッシュでよくあったのですが、回転するとすごいノイズがして、回らないなんてのもありました。

弱点は、サイズとノイズと回転です。

って、ベアリングに求められる性能ぜんぶやないかい!

@サイズについて
これは、中国ボロベアリングはよくあるのですが、例えば、4-7-2.5のハンドルノブベアリングを例にすると、

他にも、あるベアリングは軽く入るというか、スカスカガタガタなのに、あるベアリングは、キッツキツで、一度入れたら出てこない。あるベアリングは内径小さすぎで入らない

って感じです。

あるとき頼んだら、

グリス抜きの回転のいいものが来たり・・・とはいえ、これはこれでガタガタでノイズとブレがやばかったりします。


同じ業者から仕入れたら、同じものではなく、グリスベタベタのモノが届いたり・・・・


これははいるけども、


何個かに1個は、キツイというか、入らないものがあったり・・・

日本の国産メーカーではまずありえないのですが、

中国ノンブランド品なんかは、よくあるのです。

それはどうしてかというと、ベアリングの規格を守れるだけの技術力がないためです。

これは、ベアリングの精度等級というものがかかわっており、日本の工業規格でいうと、JISのT0級というグレードがあり、市場に出回っているベアリングは、ほぼすべてがJISのT0級です。この上は、T5級といわれるグレードで、これは航空機産業とかに行くらしく、そこらのベアリング問屋には下ろされないシロモノです。

では、T0級というのはどんな規格かというと、Jテクトから拝借しましたがコレです。


例を挙げて、DDL740ZZハンドルノブベアリングでたとえると、内径、外径共に、T0級は、公差が-0.008〜0.000です。

つまり、
内径3.992〜4.000
外径6.992〜7.000
というサイズ公差のもとに作られています。

1こ上のT5級の場合は、
内径3.995〜4.000
外径6.995〜7.000
といった感じ。

つまりベアリングの製造メーカーは、1/1000mmの精度をもってモノづくりをしているってわけです。

このT0級の公差をもとにして、そのベアリングを使う機械メーカーは部品を作ります。

たとえば、シマノやダイワならノブシャフトは最大値3.994くらいを狙って作るわけです。

ここで、1ミクロンの精度を守る能力のない中国ボロ工場が作ったベアリングを仕入れたら、

公差が合わなくて入らない。もしくはスカスカ。

ってことが起こるわけです。

これはサイズに関してですが、回転性能、ブレ、ガタ、すべてJISのT0級の規格があるわけで、この基準を満たせない中国工場のベアリングは

ボロイ

と、こうなるわけです。

これがノンブランドがボロといわれるゆえんです。
で、どうすんじゃいというわけなんですが、これは簡単なことで、

T0級のベアリングを中国のベアリングショップから買えばいいことです。

というわけで、やってみました。

I need bearing with good quality.

Could you supply bearing MR74ZZ

ID 3.992-4.000
OD 6.992-7.000
W 2.5mm

OK?

なんて文言で聞いてみると、

Sorry i can't understand what you mean.

なんて答えが返ってきます。

もしくは No problem.なんてあんまり信用できない返答だったり・・・・

これはアリババコムでやっても同じことで、ようするに、中国のベアリングショップも公差うんぬんを考えているサプライヤーはほとんどいないというわけです。

このレベルになると、綿密な打ち合わせが必要で、そもそも相手があんまり信用できないレベルの相手なので、ハナシにならないわけです。

ここで、ベアリングの入手経路に問題があることに気付きました。

当店----中国工場(ピンキリ)----T0級のベアリング

今やってんのはこんな感じ。アリババのショップや工場サプライヤーを通じて、T0級ベアリングを仕入れようとしているってわけです。

思うに、この経路でウチから、無数のベアリング工場を選んで規格を守れるような工場に打診すること自体が無理ですわ、だって、どんな工場か分からないですから・・・・

ここで思ったのですが、間に1件、商社をかましたらうまくいくことに気付きます。

当店----国内の中国ベアリング商社----中国工場(ピンキリ)----T0級のベアリング

このルートだったら、うまくいきます。

そもそも家電やら産業の世界で、中国のベアリングを日本に入れて商売をしている業者はたくさんいます。

大手家電メーカーは、T0級ベアリングでないと、受け入れができないのでベアリングの精度規格問題はクリア。

国内の中国ベアリング商社は、商売のノウハウで、良質なベアリングを作れる工場とパイプがあるはずで、そこをウチの仕入れルートの中に1件かますことで、有象無象の中国ベアリング工場の中から精選したT0級ベアリングを仕入れることができると、

こういう商売を考えたわけです。


ここから先は得意分野です。

数社に見積もりを取り、そこから相見積片手に、仕入れ交渉していきました。

見積もりは3社。ともに中国ベアリングの商社です。M社、S社、S社。

でもって、ここで1つこだわりの注文を入れることに。

グリス抜き

これを指定しました。

ウチはコグホイールで、4-7-2.5のベアリングを使用しているため、1つ1つ検品をかまします。

この際、グリスがあったら検品できないので、今は超音波かけてグリス抜きしているのですが、初めからグリス抜きなら、脱脂の手間がへずれます。

しかし、現在MR74ZZはシールドベアリングで、シールドBBはすべてグリスインです。

こうなると、グリス抜きをするためには、特注でベアリングを組み立てなければならないようで、そのためには、最小ロット5000個必要とのこと。

というわけで、

・脱脂済みの防錆油オイルのみのL740ZZ。いわゆるオープンベアリング仕様。

・精度はT0級

・ロット:5000個

これで見積もりを取って進めていきました。 ここで3社の回答を紹介しますと、

まず見積もり後、スグに回答があったのが、

M社。

ところが、特注で5000個は量が少ないようで、納期が3か月先。

鉄DDL740ZZ グリスなし 最低ロット5000個 57円/個

この通り。ぶっちゃけていうと、論外。

あとちょい足したら国産ベアリングと同じ単価です。

だったら国産使うよねって感じ。

続いて、S社。

ここは、納期が1か月、

ロット5000個がOO円。

10000個だと、5円マイナス。

もう一方のS社は、回答が遅くて断りましたが後日、S社に合わせるもしくは下げるとのこと。

S社の社長は、あわただしい感じで声がデカイ商売人といった、バリバリの中国人っぽい感じの人で、僕はこういう人が好きなので、S社好印象で、S社にお願いすることに決定しました。

S社の取引条件は、注文時に半金。納品前に半金。

S社の取引先は、家電メーカーが多く、使うベアリングは、T0級がキホンにあり、というのも、設計時に、内径3.992-4.000のベアリングをハメるなら、シャフト側は3.982-3.992で設計するといった感じなので、T0級厳守は当然とのこと。

単価も国産ベアリングよりはだいぶ安いし、もしダメなのがあれば、交換するとのこと。

社長の印象も良いし、期待できます^^ で、じゃぁ、OEM先どこなんや!?ちゅうて、ここを隠したらノンブランドと同じなんで、いっちゃいますよ!


ココですわ!STO

三旺株式会社!

家電メーカーに中国OEMベアリングを卸している商社!

有象無象の中国ベアリングとは違いますよ!

T0級の国産旧ベアリングです!


これがオーダーしたベアリング5000個ですわ!


全部脱脂済み。防錆油のみ!シールドベアリングのくせに、脱脂の必要なし!

おかげさまで、コグホイールの検品、かなり楽になります!


これは、STOの資料ですが、


この言葉。精度等級を表すこの言葉、これを手に入れるのに苦労し、お金もかかりました。

断言しますが、ノンブランドのボロとは全く違います。国産ベアリング級で、ノンブランド並の安さです。

安くて、品質がイイ!

ウチのは、規格通っていますので!

得体のしれないボロベアリング買うならうちのを選んでください^^

是非ともお買い求めください!


で、さっそくSTOベアリングのチェックです。


ドアップにするとこんな感じ。シールドのハジっこが少し内側に入っているような構造です。


よくみると、NMB同様、割ピンがあるので、外れるか?


と思ってエアブラシのニードルで外すのを試みるも全くダメ。細すぎです。


で、マイナスドライバの先でこじってみるも、小さすぎてシールドをこじれず。でもこれ、もっと細い工具があれば、多分オープン化が可能だと思います。


コグホイールにつけての感触はいい感じ!ノイズ少なくて、やさしい回り具合!

そりゃ、回転・はめあい、などバラツキはあるけど、国産と同様な感じですね。

しかし、はっきりいって、

ノンブランドのクソボロとは全然品質が違うですわ〜!

ブランド有の工業規格準拠品で、グリスレスで、安い!

正直、過去に例を見ないベアリングだと思いますので、是非よろしくです!


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