スプールを急に止めるとカチカチ音


2年ぐらい前に、「壊れた!?」と思って、ミクシィのアブコミュに相談したことがあります。

オーバーホールをして、スプールを軽快に回し、OK!と思ってハンドルをキッ!と急停止すると、

カチカチカチカチ!


!?


何コレ!?


買ってから、2年間気づかなかったけど、こんな症状がでました。


しかし、アブにはあるんです。

ミクシィのアブコミュでは、「多くのアブがこの症状が出るけど、新品状態で出るので、故障ではない。」で留まったけど、

なぜ、この音が出るのか、その理由が知りたい。

そこで、バラして、うんうん唸りながら、この音がなるメカニズムを探りました。


まずは、その症状から。ハンドルを回して、スプールを軽快に回し、ハンドルを急停止。すると、スプールが空回りしてカチカチと音がしています。

スプールを手で回してみると、ヤッパリ出るぞカチカチ音。

ということは、スプールとかみ合っているピニオンギアが怪しい。

ピニオンがかみ合っているところは、ブレーキブロックホルダーです。ハンドルを回すとピニオンが回り、ブレーキブロックホルダーも回ります。ブレーキブロックホルダーはスプールと連結しているので、スプールも回る。これがハンドル回してスプールが回るメカニズムです。

で、ピニオンはというと、実は、指でメインギア側に押してみると、グィ!と動きます。そして、元に戻ります。この戻る時の音に注目。カチカチ・・・・・。これがカチカチ音の正体です。

サイドカップを外して、このカチカチ音を再現します。ピニオンギアがメインギア側に押されると、ピニオンを固定しているプラスチックのホルダーもサイドカップ側に移動します。しかし、このホルダーは、真鍮の板バネによって押さえられているので、サイドカップ側に移動すると、板バネの力でスプール側に押し戻されます。そうして、プラスチックホルダーはサイドプレートに押し戻され、「カチッ!」という音がします。

つまり、ピニオンギアと一緒に白いホルダーが上に行き、板バネで元に押し戻され(赤い部分)、緑色の部分が、サイドプレートに当たり、カチッと音がする。これが連続して起こっているので、カチカチカチカチ!と音がしていたのです。

しかし、このメカニズムは、ハンドル回して急に止めたら、ピニオンがメインギア側に押し出されるという前提のもとに成り立っています。

では、なぜ、ピニオンがメインギア側に押し出されるんでしょう?

これは、ピニオンのギアの切り方にその秘密が隠されています。

ピニオンのギアに注目です。赤丸で囲った部分ですが・・・・・斜めになっているのが分かりますか?

手前が低く、奥が高くなっています。

これは、スプールをセットした時の状態です。スプールがあったら分かりにくいのでスプールはのけています。この写真の中で赤線と青線に注目してください。赤線の部分は、ブレーキブロックホルダーのブッシュが今にも抜けそうな感じですが、反対の青線の部分はブッシュよりも高い位置にあり、しっかりと、止めてられています。

ハンドルを回す→スプールが回る→ハンドルを急に止める→スプールは惰性があるので、そのまま回ろうとする→ブレーキブロックホルダーも一緒に回ろうとする→写真の赤線側にスプールの惰性による力が加わる→ブレーキブロックホルダーのブッシュが引っかかっているピニオンギアの高さが低いのでそのまま回ってしまう→ブッシュがピニオンの斜めになっている傾斜を登っていって、ピニオンはメインギア側に押し出される。


図解すると、
こんな感じです。ブッシュが走ると、ピニオンが斜めになっているので、そこを登っていき、ブッシュの位置は動かないけども、ピニオンは動くのでピニオンが押される。結果、ピニオンが押し出される。

こういうメカニズムで、ピニオンはメインギア側に押し出されます。


つまり、


ハンドル回す→スプールが回る→スプールについているブレーキブロックホルダーも回る→ハンドルを急に止める→ピニオンが止まる→スプール&ブレーキブロックホルダーは勢いが付いたままなので惰性で回ろうとする→ピニオンが斜めに切ってあるのでブレーキブロックホルダーの金属ブッシュがピニオンを押す→ギアが斜めに切ってあるので、ブッシュはピニオンをメインギア側に押し出す→ピニオンを固定しているプラのホルダーも押し出される→クラッチの真鍮板バネ(プラについているヤツ)が、押し出されたプラのホルダーをバネの力でスプール側に押し戻す→プラのホルダーがサイドプレートに当たる→カチッと音がする。


このプロセスが高速で繰り返されるので、カチカチカチ!と音がする。

こういうメカニズムで、その音が出ます。

一方、
6001Cは、ピニオンが斜めに切ってないモデルです。

ピニオンはメインギア側に動くのに、ギアは斜めに切ってないから、

ハンドルを急停止してもカチカチ音は出ません。

まとめると、

ピニオンが斜めに切ってあるアブは、スプールを急停止させると、カチカチ音が出るということです。

なぜこんな機能をつけているのかというと、スプールを急停止させた場合、惰性で回ろうとするスプールがピニオンに勢い良く衝突して、ピニオンにダメージを与えるので、その対策で組んでいます。つまり、理にかなったシステムなので、故障ではないです。

普段のリーリング時や魚がかかった後のやりとりとかで、スプールに惰性がない場合は、ブレーキブロックホルダーとピニオンがしっかりと引っかかっている状態なので、空回りすることはなく、この症状は出ません。
 
だもんで、故障ではありません。

しかし・・・・

レボは、

ピニオンは斜めに切られており、

押すと、メインギア側に動くので、

カチカチ音がしそうな気がしますが、

しません。

レボの場合、スプリングが硬い(ラウンドプロファイルのアブに比べるとだいぶ強い)ので、スプールの惰性くらいでは、ピニオンが押し出されないのか、

ピニオンに引っかかるブッシュが、ラウンドプロファイルアブに比べると細いため、

斜めに切ってあっても移動できないのかもしれません。


兎に角、カチカチ音は、こういうメカニズムで出る音です。故障ではありません。


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